木彫  「 直向(ひたむき)な少年 」      

素材の欅
 
制作中

  少年の直向な姿には心を打たれるが、最近は少年達の様子が少し変化してきたようである。

  昭和初期の頃の少年達は 素朴で身近にある自然を巧みに活用して楽しんでいた。
  男子ならば殆どの子供達が、小刀 『肥後の守』を一つ持っていた。
  それを使って竹とんぼや水鉄砲、凧、コマ、エンノミ鉄砲、模型飛行機、グライダー、竹馬、鳥籠、弓、矢、チャンバラの刀、箸、竹槍など何でも工作していた。
  学校のテストなどに関係ないが、ひたすら余暇などを楽しんだものである。
  誰にも干渉されず自分一人の世界にひたすら没頭できた至福の時であった。
  あの当時の少年達を想い『直向な少年像』を彫ってみた。
  素材の欅は以前に使った残りを活用したものである。
  以前には  2009年11月木彫『求道者M』  2012年1月木彫『カサゴを彫る』を製作

 戯言
  戦前、戦中の少年は、現代のような個性、センスはないかもしれないが、厳しい社会体制の中で真剣に生きていた。
  正義のために命をかけることは当然であり、祖父が息を引き取る前に言った言葉は今でも強く残っている。  
  男なら國のため、世界平和のために命を捧げる覚悟をしていた。
   昭和の忸怩たる時は、次のような言葉と共に想い出す。
   天皇陛下のためならば何で命が惜しかろうとも謳われていた。
   尽忠報国 八紘一宇 大東亜共栄圏 世界平和のための聖戦 滅私奉公 粉骨砕身精励努力 富国強兵 一億一心 忠君愛国 不言実行 一億総動員 などの
   言葉が唱えられた。
   
   戦時一色になってきた頃、少年達は真剣に生きていた。   命をかける考え方の深さ、強さは現代の少年には理解できないと思う。
   そんな時代だったが、人の繋がり、絆には強いものがあった。  少年同士もそうだったし、よく遊んだ。
   あの頃、小刀を使って直向に工作したことを想い出しながら作品に懸けてみた。
   
   戦争による悲惨な犠牲の上に現在の平和な時代が築かれたが、あの当時、高学歴の人たちですら判断を誤り民意が一つの方向に流れていったことを
   痛切に反省しなければならないと思う。
   いつの間にか国民全体が戦争に突き進んで行ってしまったのである。  現在よく似た状況を感じることが多いが、世界に誇る平和憲法の理念を生かし
   世界に啓蒙する外交も進めて欲しいものである。  人と人との繋がり、和みを大切にした平和を祈念する!