「 ブリ 」  Seriola quinqueradiata Temminck&Schlegel  アジ科
                                              
 

        出世魚の代表格 鰤

 先月は「カツオ」をとりあげたが、ブリも回遊魚としては理想的な形態をなし、古くから親しまれている魚である。特に出世魚として有名であるが、他の魚には比較にならぬほど多くの俗名を持っている。
地方によって異なるが年齢に応じて様々な名前がつけられているようである。
 東京あたりでは
ワカナゴ、(ワカシ)、イナダ、ワラサ、ブリ
 関西では
モジャコ、ワカナ、ツバス、ハマチ、メジロ、ブリ
 紀州近海では
ワカナ、ツバス、イナダ、ワラサ、ハマチ、ブリ
 丹後地方では
マンリキ(イナダ)、マルゴ、ハマチ、ブリ
日本では明治初期に戸籍法が制定されるまで、幼名とは別に公式の場で使う名前を命名する元服の儀式が行われていた。 魚も幼い時期と成体になってからでは形態、色彩、生態なども大きく変わるものがありその変化に応じて名付けられていったのだろう。
従ってこれらを出世魚と呼び祝福する場に供されてきた。
サカナの語源は、酒菜であるが酒を美味しく飲ませるために使われた食材からきているのだろう。
動物性の食材を真菜と言い、植物性の食材を蔬菜と呼んだようである。
神前に供えるときに用いた板を真菜板と書いていたようである。
肴という漢字も様々な関わりをもっているようである.
魚の系統としてブリはアジ科にはいる。
しりびれは2離棘と1棘17〜20軟条を持っており、側線上の後部の鱗にも特徴がある。
回遊魚として理想的な紡錘形をしており、尾びれの一振りで5〜10mぐらい進むと言われている。
適温は14〜20℃で3月頃から餌を求めて北上し始める。
水温が下がり始める晩秋には南下してくるがこの頃は寒ブリと言われ最も美味しい時期である。
遊泳層は海面下6〜20mと言われているが、イナダやワラサの若い時代にはイワシやアジなどを追って表層近くを泳いでいるようである。  中高年魚になるとイワシ、サバ、アジ、イカなどを求めて下層に変化するようである。
成長は早く1年で30cm、3年で60cm、5年で80cmに達し最大は1mを超えるものもあると言われている。
盛んに遊泳するのは夕方と明け方だと言われているが、特に明け方には1日量の半分くらい餌を摂るらしい。

第1背鰭 5〜6棘 第2背鰭 1棘30〜34軟条  産卵期は春 浮遊卵
  
 上部写真のブリ(ワラサ)は、地元の定置網で漁獲(2007.4.20.)されたものである。