木彫  「 ははぢゃひと 」      

   母者人
  母と共に生きた昭和の時代を想い出しながら彫ったものです。
  木彫と言っても少年時代、小刀(肥後の守)を使って竹とんぼ、ゴム銃、コマなど作った経験しかありませんが、庭で枯れたケヤキノキがあったので彫ってみました。
   母は、明治45年3月30日九州の田舎で生まれ、高等女学校を卒業してモスクワ大使館勤務の父と結婚しました。
  当時17歳。 未知のことばかりで大変だったと思いますが、暮らしは豪華だったようです。
  その後東京、ベルリン、モスクワへの転勤がありましたが父はモスクワ在住の時38歳で亡くなりました。
  母、27歳。 帰国して九州の田舎での生活が始まりますが男児4人を育てるのも苦労があったことだろうと思います。
  戦争直前の軍国調強い時代、そして戦争突入、海外での豊かな暮らしに慣れていたから大変なギャップがあったと思います。
  戦後は貨幣価値が変わり、制度の変化などでさらに苦労が続いたことと思います。
   自分は帰国後、学校での軍事教育などを受けて母より早く体制に馴染みました。 
   しかし、その頃母に反抗した親不孝は今でも深く反省し悔いております。
   退職後は親孝行できたはずですが、母は昭和63年4月10日76歳でこの世を去りかなえることができませんでした。
  親不孝であったことを反省し、母への祈りを込めて彫り続けたものです。
  木彫作品としてはなっていないと思いますが、祈りながら彫り続けた作品です。

      母からの愛頂きし吾が生命 恩鮮やかに八十路に灯る