「 イセエビ 」  Panulirus japonicus (von Siebold) の形態

イセエビ群 Palinurida
                                              
 主な外部形態
 1 第1触角(小触角)    2 第2触角(大触角)     3 眼(複眼)       4 嘴棘      5 頸縫合

 6 顎脚             7 第1歩脚           8 第2歩脚        9 第3歩脚   10 第4歩脚

11 第5歩脚          12 腹部の遊泳肢       13 尾節(尾扇Tail fan) 14 平衡感覚器           


  頸縫合部


平衡感覚器



第5歩脚の基部に生殖孔がある(雄)
雌は第3歩脚の基部に生殖孔がある
第5歩脚の先端部
雄の先端部(雌はハサミをもつ)
第5歩脚の先端部
雌の先端部はハサミになっている
 
 1 体の構造   頭胸部  第1触角(小触角1対)
                  第2触角(大触角1対)
                  歩脚 (第1歩脚、第2歩脚、第3歩脚、第4歩脚、第5歩脚)
                  顎脚 (第1顎脚、第2顎脚、第3顎脚)
                  口器 (大顎、第1小顎、第2小顎)
                  平衡感覚器(第1触角の基部)
                  眼(複眼)

            腹部   腹肢(遊泳肢4対)
  
            尾部   尾節 尾肢

 2  Q&A

  (1) どんな場所に住んでいるの?
    A 千葉県あたりから長崎県あたりまでの太平洋岸、インド洋、太平洋
      岩礁の多い荒磯に住み昼間は岩の隙間などに隠れている。
  (2) 雄と雌はどのようにしてわかるの?
    A 写真のイセエビは雄です。
      雄は、第5歩脚の基部に「生殖孔」があります。 
       第5歩脚の先端は写真のようにハサミがありません。
      雌は、第3歩脚の基部に「生殖孔」を持っています。 第5歩脚の先端にハサミがあります。
  (3) 頭胸部のまん中あたりにある溝は何ですか?
    A 写真で示したように「頸縫合」と言って頭胸部になる以前に頭と胸の境目だったのでは
      ないかとも言われているそうです。 
  (4) 眼は私達の眼と同じ眼ですか?
    A 眼は複眼と言ってトンボのように昆虫たちが持っている眼とよく似ています。
      たくさんの小さな眼が集まって広い範囲のものが見えるんです。
  (5) 水中で体が傾いたり上下左右をどのように判断しているのですか?
    A 私達と同じように平衡感覚器を持っていますが、大きな違いを簡単に言えば小さな袋のような
      ものの中に小さな石が入っていて体が傾くとその石(平衡石)が転がりどこの神経に当たるか
      によって判断しているようです。
      イセエビの場合はたくさんの石が入っているそうですが、石灰質ではないとのことです。
      漁師の人たちに聞いたことですが、第1触角(小触角)をつかんでぶら下げるとイセエビは暴れ
      なくなるとか言っていました。   平衡感覚をなくすからでしょうか。
  (6) イセエビはどこで息をしているのですか?
    A 動物たちは、「えら呼吸」「肺呼吸」「皮膚呼吸」などしていますが、イセエビは水中生活をして
      いますので当然「えら呼吸」ですね。
      どこにえらがあるのかと言いますと、顎脚、歩脚につながるようにえらのある部屋がありえらは
      21対連なっている。  調理などでイセエビの甲殻を外すときに是非観察するとよいでしょう。
      しかし、写真のイセエビは頂いてから発泡スチロールの箱の中で6日間も生きていました。
      その呼吸器官の働き(えらについている水分の酸素を吸収)と生命力の強さには本当に
      驚きました。
  (7) 肛門はどこにありますか?
    A 尾節の中央前部にあります。  
  (8) イセエビの大きさは、どのように測るのですか?
    A イセエビの体のまん中(正中線)を触角をのぞいて先端から後縁(尾節の後縁)までを
      はかります。
      写真のイセエビは、体長 31cm
  (9) 餌を探したりするときには、眼のほかに何か感覚器を持っているのですか?
    A 第1触角(小触角)が味覚、触覚を感じているらしいです。
      よく観察すると小さな触角の先端の方には小さな棘状のものが出ています。
 (10) 第2触角(大触角)は何に役に立つのでしょうか?
    A 外的からの防御に使われているようです。

 3 イセエビについて 将来の夢
    イセエビは大変高価な水産物で三重県のものは特に珍重されているようです。
    しかし、その資源は自然に頼っています。  
    1尾が産卵する数は 数十万個に達するとも言われていますが、生き残れるのはわずかです。
    人工的に管理増殖ができるならば大変素晴らしいことです。
    これは世界中の水産業者が同じ願いを持っていたと思いますが、三重県で初めて人工ふ化から
    成体になるまでの増殖に成功しているそうです。    すごいことです。
    まだ企業ペースまでには至っていないようですが、近い将来実現されると思います。
    若人たちがこの三重特産である伊勢エビ研究に取り組み将来への夢実現を目指して欲しいですね。

 4 イセエビの生活史
    産卵は5月から7月頃で雌の腹部にある腹肢に付着させる。
    卵は数十万個と言われ孵化するまで30〜60日間抱えている。
    孵化した幼生は「フィロソーマ」と言われ親とは全く異なる形をしている。
    約250〜350日かけて25回ほど脱皮すると言われている。
    その後「プエルルス」に変態し、再度脱皮して親の姿のような稚エビとなる。
    「プエルルス」の期間は25度では約2週間ぐらいだそうです。
    食性は、肉食性でカニ、エビ、貝、ウニなど豪華なグルメ食事をしているようだ。
    
    夜行性のため夜に攝餌しているようだが、エビ刺し網はこの時をねらうので夕方から朝まで仕掛け
    られる。
    月夜の晩は、イセエビの目がよいためか漁が期待できないので仕掛けることはできない。 
    イセエビの天敵は「たこ」だが、この「たこ」を漁法に使っている地方もある。
    以前、イセエビ漁に行ったときに刺し網にかかっていたイセエビがたこにやられて抜け殻のように
    きれいに身を抜き取られているのを見たことがある。

 5 伊勢エビに関するメモ
      伊勢海老は長寿を意味するとも言われ縁起がよく婚儀にも用いられたりしている。
      また、江戸の正月では、伊勢海老とユズリハが必ず用いられていたようである。
      
      エビ(海老)が偕老に通じることからオトヒメエビ科の小エビで海綿の中に雌雄一緒に入って
      仲良く暮らしているものを夫婦仲のよいことに例えられて「偕老同穴」と言われている。


   このページ作成に関わって三重県科学技術振興センター水産研究部の研究員の方並びに
  千葉県水産総合研究センター生産技術研究室の方々に大変お世話になり資料提供やご助言を
  頂きましたことを深く感謝いたしております。 
        後になりましたがこの場を借りて厚くお礼申し上げます。