懐かしい「 鉱石ラジオ 」


         
 過日、名古屋の大須(電気街)を歩いていたら珍しいコイルを見つけた。
懐かしい並4の「同調コイル」である。
説明文を見ると鉱石ラジオや並4型ラジオの配線図まで出ておりびっくりした。
ものづくりが好きな者にとっては、見過ごせない。  
そこですぐに購入して帰ってから身の回りにある抵抗やバリコンなどを組み合わせて何とか完成することができた。
 日本でラジオ放送が始まったのは、大正15年3月。 その当時はほとんどの人たちが鉱石ラジオを使っていたようだ。  
現在のように様々な電波雑音もなくきれいな波が流れていたと思う。
しかし、鉱石ラジオは感度も悪いので効率よく作らないと聴けない。
自分が最初に作ったのは小学生の時、「子供の科学」(現在も発行されている)誌によるものである。  材料も今のように購入することはできず、電気器具の廃品を分解してエナメル線や、綿巻き線などを取り出したりして組み立てた。
鉱石はたぶん磁鉄鉱を使ったと思うが、磁鉄鉱に縫い針を接触させて検波を試みた。
触れる加減によって感度が変化するので調節と固定も大変だった。
組み立て完成し放送の電波をキャッチしたときの感動は今でも忘れない。
人の声、音楽が聞こえる。
かすかにイヤホンから聞こえる音はまさしく電波をとらえた証拠である。
鉱石ラジオはラジオ受信機のもっとも基本的な要素で構成されている。
電波による高周波を鉱石検波器によって検波し、音声電流にして聞くだけである。
高周波の増幅や音声電流の増幅もない。放送局が近ければ同調コイルも完全でなくてもよい
しかし、効率よく電波をとらえるための工夫が必要でアンテナやアースも軽く扱えない。
聞きながらもっとも効率よくなるように鉱石の触れ具合を加減する。
すべてが手作業アナログの世界である。
十数年前にも鉱石ラジオを作って尾鷲天文科学館で来館した人たちに聞いて貰ったがそのときは大型のコイルを手作りして完成させた。
イヤホンから常に音声が流れ電池などの電源は使わないのでこれほど省エネ的なものはないと思うが、放送局から離れた電波が弱いところでは使えない。
しかし、電波や受信機の学習にはもっとも適した教材ではないだろうか。

主な材料 ・同調コイル ・ダイオード(鉱石検波器の代用)・抵抗 ・バリコン
     ・ターミナル(3個)  ・イヤホン