『クロフジツボ』  
有蓋蔓脚類 
                    フジツボ型類 Tetraclita squamosa
 
 紀北町の磯では最もふつうに見かける仲間である。
貝殻をかぶっているかのように見えるので貝の仲間だと思っている人も多いが、実はカニやエビに近い仲間である。   足(蔓脚)を伸ばした状態を見ればすぐに判断できる。
 静かに近づいて潮水をかけてやるとしばらくして小さなツルアシを動かし始める。
 写真は動かし始めたところである。
漁師や水産業に従事する者にとっては害になる生き物としか考えなかったが、最近新たなることを知ることができた。
このような形のフジツボは、中世代白亜紀(約7000万年前)ぐらいから地球上に出現したと言われているから人類よりも遙かに先輩である。
分類学上も「貝類」とみなされた長い歴史がある。
 ゲーテ、ゲスナー、ラマルク、キュビエなど博物学者たちも悩ませたらしい。 石灰質の殻をもち岩に貼り付いている姿からは貝だが、解剖学的には不思議に感じていたらしい。
蔓脚類の語源cirrhipedes(巻き脚)はラマルクが名付けたと言われている。
「進化論」「種の起源」で有名なダーウィンは1846年から8年間熱心に研究して「フジツボ総説」1200ページを書き上げておりこの時「種の起源」への構想ができたものと考えられる。 
 「種の起源」出版1859年
江戸時代の貝類図譜にも明細に描かれたフジツボの絵が載っている。
食用としても 東京築地ではキロ3000円する高級食材(ミネフジツボ)があるらしい。
水中でも固まるフジツボセメントは、水中セメントの開発に役立っているようである。
 追記した後半部分については、「フジツボ」 魅惑の足まねき 倉谷うらら著 から引用させていただきました。  
 6月末に名古屋丸善書店でこの本を見つけて早速購入しましたが、今まで全く知らなかったフジツボに関する様々な内容に驚き夢中で読みました。  巻末にはフジツボの体のつくりや部分名称を理解するための模型作りもあり本当に興味深く学習できる本です。
    倉谷 うらら さんには深く感謝いたしております。