海辺に咲く 『 テリハノイバラ 』  
     
 ノイバラの海浜タイプです。
 野山に自生するタイプとは少し異なるところがあります。
 海辺は強い潮風が吹き、潮をかぶったり乾燥することもありますからあまり高くならずに地面を這うように茎が伸びて厳しい環境に耐えています。
 ノイバラの仲間で、葉に光沢があり、花は白花の他に赤花もあるようです。
 当地で見かけるのは白花です。  実は赤く熟します。
 「ノイバラ」も自生しており普通によく見られます。

 ノイバラの花言葉・・・・・・『愛』『素朴な可愛らしさ』

 シューベルト(1797−1828)作曲の『野バラ』は世界中で愛唱されていますが、これはゲーテ(1749−1832)が『ノイバラ』 を詠んだものです。 
 ゲーテの作詞(1771年 22歳) シューベルトの作曲(1815年 18歳)  
            ウェルナー作曲の「野ばら」も有名
 シューベルトが作曲したときのゲーテの年齢は 44歳  
 シューベルトは31歳の生涯の中で600余の珠玉の歌曲の他、交響曲、室内楽などを作曲している。

近藤朔風訳詞 『野バラ』

 童は見たり 野なかのばら  清らに咲ける その色愛でつ
 あかず眺むる 紅におう 野なかのばら

 手折りて行かん 野なかのばら  手折れば手折れ 思い出ぐさに
 君を刺さん 紅におう 野なかのばら

 童は折りぬ 野なかのばら 手折りてあわれ 清らの色香
 永久にあせぬ紅におう  野なかのばら 


万葉集にもノイバラは茨(うまら)として詠まれています。

 道の辺(へ)の、茨(うまら、うばら)のうれに,延(は)ほ豆の、からまる君を、はかれか行かん 
 第20巻 作者 丈部鳥(はせつかべのとり)

戯言(たわごと)   自然と人工

現代は、品種改良によって様々なものがつくり出されています。
バラも立派な改良品種がもてはやされており、ノイバラはその原種の一つとして重要なものだと言われています。
しかし、よく考えてみれば原種こそ自然に近い本物ではないでしょうか?
改良されてきらびやかになったものだけでなく野生に育つ野草や樹木にも大きな魅力を感じます。
バラについても人工品種は確かにすごい彩り、形で惹き付けるものもあります。
でも、よく観察すれば、ノイバラには自然を感じ、本来の生きる姿を見せてくれるものがあります。  
歌詞のように”清らに咲いているすがた、その色を愛でる心 素敵です。”
ゲーテの原文に近い翻訳も好きです。
 ”少年は小さなバラが咲いているのを見た 荒野のバラを” 
 ”それはとても若々しく朝のように美しかった”
”少年はそれを早く近くで見ようと駆け寄った”   
  ”そしてとても喜んでそれを見た”
”赤い小さなバラ 荒野のバラ”
”少年は話した「僕は君を手折るよ、荒野のバラ ” 
 ”バラは答えた「あたしはあなたを刺すわよ」”
”あなたがあたしのことをいつまでも想っているように”
 ”それに折られるなんてあたしには耐えられないから”
”赤い小さなバラ 荒野のバラ”
”それでも少年は折った 荒野のバラを” 
 ”バラは抵抗して刺し 「痛い」「ああ」などと言っても無駄だった”
” 結局バラは折られてしまった” 
  ”赤い小さなバラ 荒野のバラ”

子供達にももっと本当の自然を理解して欲しいしです。
バラの刺に刺される経験ぐらいは、当然させてもいいのではないでしょうか。
海辺を訪れる人たちにも、もっと自然を理解して楽しみを味わって欲しいと思います。
最近、そんなことを考えながら海辺に関する資料を纏めたりしています。