「 潮だまり  」 (タイドプール)      

       
        干潮時の海山町船越の磯  ながえ


     「 潮だまり 」 
 ヒジキやウニ、クロイソカイメン、石灰藻、巻き貝などが仲良く暮らす小さな世界。

 
              「 潮だまり 」 ( TIDE POOL )                                                                                      
 「潮だまり」は、ひらがなだけで書いても読んでも感じのよい日本語だと思う。
初めてこの言葉を使ったのは、三重大学、東海大学の岡田弥一郎先生だと言われているが、tide poolを直訳(潮の池?)せずによかったと思う。
水たまり、吹きだまり、たまり場、醤油のたまりなど「たまり」の付く言葉はたくさんあるが、いずれも佳い感じだ。 
春になって水温む時候になるとよく潮がひき、磯遊びや磯の観察をするには絶好のシーズンである。
 海山町船越の磯も訪れる人たちが多くなるが、ここでは干潮時にできる潮だまりについて思うことを少し書いてみようと思う。
潮だまり(タイドプール)は、波浪が打ち寄せたり、寒暑の差も激しく、乾湿についても変化の著しいところである。  
また、塩分、水質についても変化は大きく、生き物たちにとっては決してして住みやすい環境とは言えないかもしれない。
 しかし、ここには見事な生態系ができており、生物たちが多様性を認め合いながら自然に適応している姿が見られる。
 海藻が茂り、貝類、稚魚、カニやエビの仲間たち、ナマコ、アメフラシなど多種多様の生物たちだが見事に共生している。  狭いけれども小さな世界、宇宙を感じる。
 棲み分けをしている。 環境に適合した形、彩り、機能などすべてが理想的と言える。
我々人間は、ともすると欲望を中心に考えて生きているが、自然のしくみや生き方にも学ぶべき事が多いのではないだろうか。
 「潮だまり」の生き物たちは自分たちの生き方で他を制圧しようなどと行動することはない。 勿論弱肉強食の世界はあるがそれもバランスが保たれた世界である。
 密教の「曼荼羅」の世界に通ずる感じもする。
菩薩や諸々の佛神たちが、一つに納まり他を排斥したり害することもなくそれぞれの宇宙観を創り和んでいる。
しばらく「潮だまり」の観察をしていると岩陰から「カニ」と「ヤドカリ」がはい出してきて戯れあっている。 「ミドリイソギンチャク」も美しい触手を伸ばしている。    機会があれば多くの人たちに見てもらいたい「潮だまり」である。