日高幌尻岳

日高幌尻岳
日高幌尻岳

【日 時】2002年 8月17日(土)
【天 候】晴れ
【山 名】日高幌尻岳(2052m)
【山 域】北海道 日高
【ルート】 (4:30)ゲート前--(5:45)取水ダム--(6:20)4の沢函--
(7:15)幌尻山荘--(9:00)命の水--(9:30)ピーク--(10:50)幌尻岳山頂--
(13:00)命の水--(14:05)幌尻山荘--(15:50)取水ダム--(17:00)ゲート前
【所要時間】12時間30分
【メンバー 】単独


「翌朝、地下足袋にワラジという格好で宿を出た。歩き出してから、いきなり川の中をジャブジャブ渡った。川筋がすなわち道だから、徒渉はそれから限りなく続いた。初めはなるべく濡れまいと心がけていたが、ヒザが濡れ、モモが濡れ、ついに冷やりと一物が水に犯されるに及んで、もう観念して濡れるということには平気になる。」深田久弥の幌尻岳の一節である。

私にとって幌尻岳は最後の百名山となった。北海道南部は2週間ほど雨続きで今回は入山を諦め掛けていたが、天候が良くなる兆しを呈していた。前日、平取町の役場に山荘と川の状況を確認した。夜間R252、R274と走らせる。日高で食料を調達するつもりだったが、近くにオートキャンプがあるようで、コンビニは人で溢れ、オニギリなどは売り切れていた。買うものはなく、現在の食料で翌日を過ごすことにする。R237を南下し幌尻岳の案内を左折する。林道は長く辺りは全く人気がない。峠のようなところを越え、暫くするとダート道になる。暗闇の中「幌尻山荘」と書かれた標識を頼りに林道を走らせる。終点近くになると路駐している車が現れる。ゲートまで進み、空いているところを見つけ駐車し、仮眠となる。

4時に起床して、暗闇で準備をはじめる。日帰りの予定だが、徒渉にどれ位時間を要するか判らない。山荘泊も考え、着替えや食料を余分にザックに詰め込む。パンとバナナで朝食を済ませる。徒渉のため渓流靴を準備していたが、昨年の日高神威岳の経験もあり、登山靴とスパッツのみで4時30分に出発する。

ゲートには入林届と百名山のアンケートのボックスがあったがアンケートのボックスは鍵が掛かっていた。林道は崩れそうな箇所が多く、メンテが大変そうに思えた。ゲートで車を規制しているのも頷けた。平坦な林道を黙々と歩く。枝道があるところには「→幌尻山荘」の標識がある。落差と水量のある滝が幾つか望まれた。1時間30分弱で林道の終点の取水ダムに到着する。建屋があり監視中のステッカーをフロントに置いた帯広営林署の車が停まっている。

ここから徒渉が始まるのかと思っていたが「幌尻山荘4K」の標識が現れ、右岸の川沿いの道を延々と歩く。梯子を登り、暫く歩くとやっと徒渉点に着く。いきなり沢が合流する函状の徒渉であったが、大きなザックを背負った下山者が先に渡った。雨後で水量と流れがあり、ストックで水深を測り、摺り足・やや大股で歩を運ぶ。過剰と思えるほどピンク色のマーカがあり、徒渉点で迷うことはない。ここから暫く徒渉が続く。最高の水深で股下が濡れる程度で私にとっては、楽しい徒渉になった。下山者が多く、皆、徒渉用のゴム靴・運動靴・ワラジをはいていた。徒渉区間は1K程度だと感じた。かつては渡渉点が判らず、川に飛び込んで遡行したこともあるのではないだろうか。右岸の道となり、最後の徒渉をすれば幌尻山荘に着く。
徒渉 幌尻山荘
徒渉
幌尻山荘
意外と早く山荘に到着したので、日帰りの旨を管理人に伝え、着替えなど山荘に置かせてもらう。一服して食事を摂っていると、早足で単独行が上がって来る。ここからは原生林の中の一気の登りとなる。今までの平坦な遡行とは異なる歩行となる。さっきの単独行が勢いよく追い越していく。一旦平坦な道となるがまた急坂となる。1時間30分ほどで命の水に到着する。休憩する。命の水は下山の時、確認することとして先に進む。

木の根と岩の混じるハイマツの急登となる。一時、霧が掛かり視界がなくなる。山荘から早朝登った人が下山してくる。山頂は素晴らしい眺望だったと聞く。急坂を登るにつれガスも取れ、登り詰めると待望のカールを抱いた幌尻岳が現れ、対岸には戸蔦別岳の三角形も望まれる。カールに流れる水音を聞きながら暫し休憩する。

カールを捲くようにルートが刻まれ、カールの端からでも1時間ほど要しそうだ。木の絡む道を過ぎれば、お花畑帯になる。ウサギギクが咲いている。山荘発の数組の下山者と行き交う。かなり足を使ってしまったようでバテ気味になり、ユックリ歩を運ぶ。やがて水を湛えた新冠ダム湖が望まれ、日高の主脈が姿を現す。新冠ダムのルートと出会い、岩場のカール側のルート辿って山頂に達する。
戸蔦別岳 山頂へ
戸蔦別岳
山頂へ
重装備の単独行が寛いでいる。9時ごろには北戸蔦別岳まで見え、南の雲が取れるのを待っているとのことであった。2人のみの山頂となった。カムエクは絶えず雲が掛かっていたが、それから北に伸びる稜線は綺麗に望めた。しかし、主となる山が判らず山岳同定いまひとつできなかった。南西方向は新冠川を挟んで日高主脈と対峙するように累々たる山があり日高の山深さを思い知らされた。帰りも長い行程が待っているので、七つ沼は諦め、一通り風景をカメラに収める。単独行は本日は七つ沼泊まりなので、ユックリしていた。帰途に就く。

幌尻岳周辺は人が掃け、静かな昼の佇まいを呈していた。カールからナキウサギらしい声が聞こえる。お花畑で撮影モードとなる。往路、パスした命の水を確かめる。ユックリ歩を運びながら山荘に辿り着く。朝の単独行の人が戸蔦別周りでもう帰還していた。山荘に預けていた荷物を取りに行ったが、本州組が引き揚げたせいが山荘内はガランとしていた。
日高主脈 新冠ダム方面
日高主脈
新冠ダム方面
しかし、徒渉を始めれば、まだまだ人が上がってきた。徒渉は慣れたつもりになったが、水から揚がる時、ヌメリの岩で少し滑り、気を引き締める。朝緊張して足を入れた函のところも忘れ、アッと言う間に楽しい水遊びは終わってしまった。1Kほどの右岸の道を進み取水ダムに着く。平坦でやや下りぎみの林道も長く感じられた。往路では気付かなかった滝などを鑑賞しながら気を紛らわす。何とか車のところに戻り12時間の行程を終える。

明日は最終日で積丹岳に登り、札幌で友人と会い、小樽からフェリーに乗り込む予定である。夕張で昨日の樹海の湯に入り疲れを癒す。R274を走り大谷地から高速に乗り小樽で降りる。R5を走らせ余市からR229に入る。道の駅セタカムイ岩で睡魔が襲ってきたのでここで仮眠となる。


日高幌尻岳の草花木

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