光岳・易老渡岳

光岩
光岩

【日 時】1999年 7月16日(金)
【天 候】晴れ時々曇り
【山 名】光岳(2591m)・易老渡岳(2354m)
【山 域】長野・静岡
【ルート】 (11:30)自宅==(3:00)易老渡(7:30)--(9:30)面平--
(13:00)易老渡岳--(15:30)光小屋--(16:00)光岳
【所要時間】8時間30分
【メンバー 】単独


ツェルト、ストーブ、食料・3日分の行動食、着替えなど山中での宿泊準備をしていたら深夜の出発になった。152号線までは5月の熊伏山でお馴染みである。小栗村の案内から入る(上島トンネルのところから入るのが良いのかもしれないが、夜間通行禁止の部分もあり、夜間はこのルートからが正解かもしれない)。村の上部にでる。下の道まで降る。車のライトの前を動物が横切る。「たぬき」である。今年4月四国に行った時、見かけたときは珍しいと思ったが、南アの深夜の山奥では珍しさも感じない。便ヶ島までは、塩見岳に日帰りで登った後、偵察で来たことがあるので、赤い橋の易老渡はすぐ判別出来た。3:00易老渡に着くが、車はない。車中で仮眠。睡眠中、幾人かの声を聞いた気がする。起きてみると横浜ナンバーの車が一台停まっているのみであった。車で諏訪の釣り人が通りかかる。いつもより重い荷物に加え、眠気眼の状態でヨロヨロしながら出発。橋を渡る。飲み物はいつものテルモス一本のみしか持ってこなかった。もう一本必要と気付いたが、後の祭りであった。

標識のある面平は、大木が林立する鬱蒼とした原生林帯であった。気温が少し低いのだろうか、恐れいたヒルはないようだ。ずっと同じような傾斜が続く。ツガの木が主体で倒木が多い。先週の中央アに比較しても原始林の様相が濃い。

地図にある易老渡岳手前のピークになかなか着かない。朝方、照っていた太陽はなく、ガスも時々現れる。目指すピークも見落として、通過してしまっただろうと考え始めた頃、岩場の瘠せた尾根が現れる。三角点のピークを確認し、これだけ時間を掛けてまだこの程度という気持ちになる。現在地を確認し、易老渡岳までの到達時間も予測できるようになる。若干の切り開きはあるが倒木帯が現れる。南アルプスの稜線にはそう簡単には立たしてくれない。登山口にあった5時間30分という所用時間はダテではなかった。易老渡岳山頂は樹林帯の中ではあるがはっきりとしたピークであった。山頂示すプレートと茶臼方面と光岳への標識があった。

光岳へはまず今まで登ってきたのが情けなくなるほど下る。向かう方向に高い山が望まれ、少なくともあの高さまで登り返さねばならないと思うとウンザリする。2つ程のピークをアップダウンするが、地図に載っているほど顕著なものは確認できなかった。天候も再び太陽が顔を出し暑いくらいになってきた。

三吉平は鬱蒼とした森の中であった。地図を確認すると、距離的には中間点だがここからはひたすら登りである。枯れた谷のようなところを詰める。雨が降れば間違いなくこの部分は谷化する。登り詰めれば広めの平原に出る。道の左にチョロチョロ水音が聞こえる。登り始めてから7時間ちかく、始めての水場である。思わず大休止となる。雨季に使用できる水場である。小屋まで15分という案内と、水を持っていくようにとの案内があった。

ひと登りするとイザルヶ岳まで往復10分の標識があり、センジヶ原が現れ平原の向こうに赤い屋根の新築の光小屋が望まれ今までの労苦が報われた気分になる。本日は行動中、登山者に会わなかった。

一応、ストーブ・乾燥食品・ツェルト・シュラフカバーなどは持参してきたが、賄い付きの宿泊にしたいので問い合わせてみる。来る前役場に問い合わせたところでは賄い付きの宿泊の条件は50歳以上、3人グループ以下、3時までに到着であった。3時30分到着であったので私は自炊という事になった。

水色の小さな花 ザックを小屋に置き、カメラを持って光岳に向かう。寸又峡への分岐を見送り、一登りすると光岳である。木立に囲まれ視界はない。三角点と静岡県の串ダンゴの山頂標識がある。光岩方面に少しすすむと展望台があり、深南部の山々が望まれるが、残念ながら、20万分の一の地図を持って来なかったので山岳同定はできない。下方に白く光ったように見える光岩も見える。山頂から数分下ると光岩の頂部にでる。岩に咲く水色の小さな花が鮮やかである。深南部の山々の格好の展望台であるが、同時にそれらの山々からの格好の目標点となり、山岳同定の目標物となっているのであろう。しばらく待っていたが、雲もとれそうになかったので、小屋に帰る。

食事の準備をしていたら小屋の人から「コケモモ」のお酒を出された。酒を控えている私であったが、断るわけにはいかず少し飲んでみた。お猪口程度のカップであったがアルコール度が強かった。ピンク色の「コケモモ」の甘みが溶け込んで美味しかった。

小屋の人からバイオトイレについて説明を受ける。「使用する時間は発電機が動いている間にする。発電機が動いていない間は手前のトイレを使用する。使用後のトイレットペーパーは便器に捨てず側の箱に捨てる。間違えて便器に捨てた場合は、小屋の人を呼ぶ。」とのことであった。トイレットペーパーについては他の山小屋でも実施されている。が、習慣とは恐いもので無意識に行動してしまうこともある。使用できる時間は発電機の作動している朝と夕方の数時間のみであった。まだ小屋の運営も始まったばかりであるが、匂いも気になるものでなく、我々の排泄物を微生物が分解するトイレがいつの日か、我々のトイレにも取り入れられる日が来るかもしれない。

小屋から十数メートルの所に水場への入口がある。ガレた急な斜面を降りていくと冷たい水場がある。ガレた傾斜地は一面のお花畑であった。携帯電話を持って来たので、挑戦してみた。水場への入口からホンの数メートル離れたところで感度があった。全くのピンポイントでそこから1〜2mも離れたり、方向を変更すると感度は失われた。家内は留守で何度か別の時間でもかけてみた。4〜5回程挑戦したが、6時〜8時頃まであった感度が8時30分頃には失われてしまった。気温・湿度など大気の変動により、電解強度が集中する箇所も影響するのであろうか?(翌朝、同じ場所で通話することができた。)

光小屋からの景観は素晴らしく、センジヶ原を前に聖・上河内・茶臼や富士山が居ながらにして望まれ、イザルヶ岳まで足を伸ばせば南ア深南の山も含め360度の大景観となる。本日の宿泊者は10名前後。2階の北側の部屋を一人占めして寝ることができた。家より広い寝室空間でグッスリ眠りに落ちていった。空は夜が更け込むほど晴れ渡った。19日を休みにすれば、4連休となる人も多く、その前に山に入ったこの日は幸福な一日であった。

ホームページにもどる