曲  の  紹  介

ワーグナー作曲「ローエングリン〜第3幕への前奏曲」
MIDIデータ M. HatTarsakey

 リヒャルト・ワーグナー(1813−1883)が作曲した歌劇「ローエングリン」の中で、主人公ローエングリンがエルザ姫と結婚する第3幕の開幕前に演奏される曲で、喜びの幕が上がる前奏の音楽です。演奏時間は2分57秒です。






〜 早わかり ! 速攻 !? 〜

ローエングリン

悲恋と奇跡のオペラ"ローエングリン"のストーリーを紹介します!


1 ドイツのオペラ王 ワーグナー


 ワーグナーは、自らが台本も執筆したほとんど唯一の作曲家です。オペラは分業で台本は台本作家が書くのが常ですが、ワーグナーは自分で台本を書くことができました。代表作として「ローエングリン」のほかに「タンホイザー」「トリスタンとイゾルデ」「ニーベルングの指環」「ニュルンベルクのマイスタージンガー」「パルジファル」があります。
 彼の私生活の方はどうであったかというと、借金だらけ人生でした。オペラの台本を書くための膨大な蔵書もありましたが、すごくおしゃれで贅沢な衣類を多く持っていました。踏み倒した借金は数知れず、また恋した女性も多かったのです。最初の結婚相手は人気女優ミンナでしたが、裕福なフランス人の人妻と駆け落ちを試みたこともあります。ワーグナーは女性に受けがよく、大金持ちの未亡人や貴族の女性から多くの援助を受けていました。弟子ビューロの妻コジマとの間に子どもが生まれるというスキャンダラスな出来事もあり、ミンナの死後はコジマと結婚しています。また、イタリアで客死する直前にも女性歌手との噂がありました。


2 データ


 作曲/1848年4月28日
 初演/1850年8月28日
     ワイマール宮廷劇場
     フランツ・リスト指揮
     ドイツの詩人ゲーテの誕生日を
     記念する特別公演として
 構成/3幕


3 主な登場人物


 オペラは、一般的に声の種類で役柄が決まっています。男声の高い声テノールが主人公だと、低い声を出すバリトン・バスは悪役または準主役などという具合です。また、女声では高い声のソプラノがヒロインで、低い声のメゾソプラノ・アルトが悪女などというパターンが多いようです。このオペラ「ローエングリン」も例外ではありません。

ローエングリン(テノール)
 神聖な騎士ですが、名前と素性はオペラの最後に明かされます。

エ  ル  ザ(ソプラノ)
 ブラバント公国の公女で、夢の騎士に救われます。

フリードリヒ(バリトン)
 ブラバント公国を奪おうとするテルラムント伯爵です。いわゆる悪役です。

オルトルート(メゾソプラノ)
 テルラムント伯爵の妻で、魔法を使うことができます。夫以上のワルです。

ハインリヒ(バス)
 ブラバント公国を訪ねてきたドイツ国王です。

ゴットフリート(黙役)
 エルザの弟で、行方不明になっています。


4 あらすじ


<第1幕>

 中世、アントワープ郊外のシェルデ川畔に大勢の人が集まっています。ドイツ国王「ハインリヒ」が東方遠征の兵を集めるためにブラバント公国に来ています。そこで、テルラムント伯爵「フリードリヒ」が訴えを起こします。ブラバント公国では前大公の死後、公国の世継ぎである「ゴットフリート」が行方不明になっているのは、その姉「エルザ」が殺したからだというのです。国王は「エルザ」を呼び出して釈明を求めます。「エルザ」は夢に見た神に使わされた騎士が潔白を証明するために戦うと答えます。本当にそんな騎士がいるのでしょうか。
 ところが、奇跡が起こります。ラッパの音に応え、川に白鳥がひく小舟に乗って輝かしい武具をまとった騎士が現れます。「エルザ」は騎士にすべてを捧げると誓い、また騎士の言うとおり、名前と素性を尋ねないことを約束します。この騎士は「フリードリヒ」と決闘し、彼を打ち負かします。おかげで「エルザ」の潔白が証明されました。

<第2幕>

 アントワープの城内の場面です。白鳥の騎士が現れたことにより、「フリードリヒ」とその妻「オルトルート」によるブラバント公国を奪い取る計画は失敗しましたが、これで終わったわけではありません。「フリードリヒ」は「オルトルート」に、自分は決闘に敗れて追放処分になるが、「エルザ」に弟殺しの罪を着せるようけしかけたのは「オルトルート」であることを愚痴ります。「オルトルート」は、騎士が決闘に勝ったのは魔法を使ったからで、名前と素性を言わせるか、あるいは体の一部でも切り取れば魔法が解けると言います。「フリードリヒ」は、気を取り直し、二人は復讐に燃えるのでした。
 また、この「オルトルート」は魔法使いで、行方不明の「ゴットフリート」はこの女によって白鳥に姿を変えられていたのです。「オルトルート」は「エルザ」に巧みに取り入って、名前も素性もわからない騎士は怪しい、魔法使いに違いないと吹き込みます。
 そして、騎士と「エルザ」が結婚することになります。こうして騎士は大公ではなく、保護者として領地を守ってくれることになります。
 婚礼の式のために「エルザ」が礼拝堂へ向かう時にも、「オルトルート」は騎士は怪しいと言い立てるのですが、追い払われてしまいます。国王「ハインリヒ」と騎士がやってくると「フリードリヒ」も群衆に向かって騎士が魔法を使っていると言い、名前と素性を明かすよう迫ります。しかし、騎士に答えを要求できるのは「エルザ」だけです。二人は礼拝堂に入っていきます。

<第3幕>

 華々しい「第3幕への前奏曲」の後に開幕し、いよいよ騎士と「エルザ」の婚礼の式が始まります。続いての音楽は「婚礼の合唱」です。いわゆる「ワーグナーの結婚行進曲」と言われている曲です。
 「エルザ」は、疑いの心よりは、むしろ愛する人の名前を知りたい気持ちがふくらんでいきます。
 そして、「エルザ」は騎士と初めて二人きりになったとき、ついに禁じられていた言葉を発します。騎士に名前を尋ねてしまうのです。騎士が困惑しているところへ「フリードリヒ」が仲間の貴族を率いて乱入しますが、騎士は「フリードリヒ」を一撃で倒しました。
 シェルデ川畔で騎士との別れのシーンになります。国王「ハインリヒ」の前で、騎士は、自分が聖杯を守る王「パルジファル」の子で、「ローエングリン」であると名乗ります。「オルトルート」はあざ笑うのですが、騎士が祈りを捧げると、白鳥にされていた「ゴットフリート」は人間の姿に戻ります。「オルトルート」は叫び声を上げて倒れます。騎士は、迎えに来た白鳥がひく小舟に乗り去っていきます。「エルザ」は悲しみのあまりに「ゴットフリート」の腕の中で息絶えてしまうのでした。


 これで、オペラ「ローエングリン」のあらすじの紹介は終わりです。悲しみに暮れる姫を、夢に見た騎士が救うというロマンチックな話ですが、愛するがゆえに知ろうとした気持ちが悲劇を生んでしまったのです。


5 蛇足説明


 このページのアイコンは、白鳥をイメージして選んだ車の写真です。ドアが上に開くガルウィングというタイプで、正に翼を付けた輝く鳥のようです。東京モーターショー2007にマツダが出展したコンセプトカー「大気(たいき)」です。東京モーターショーのページに掲載しているように2007年11月に撮影したものです。
 さらに余計なことですが、このホームページの管理人は、自分の結婚披露宴の入場の音楽に、この「第3幕への前奏曲」を選びました。後々、悲劇にならなければいいですけど。