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　　　　　　　　　　　　日常の風景　　　NO.0036
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鳩のフレーム

わたしの事務所は３階にある。
事務所のドアに続いている廊下の突き当たりは、
搬入口と呼ばれている、テラスである。

廊下とテラスの間は、鉄の重々しい大型の扉で仕切られている。
テラスは広い。間口は約１０×３メートル。ちょっとした広場である。
今はほとんど無用の長物となりつつあるが、
昔は、この３階に大型の精密機器を数多く設置する必要があったため、
このような搬入口が必要であった訳である。

テラスの外壁は、長さ３０センチはあろうと思われる、
がっしりとした褐色のレンガが埋め込まれている。

わたしは、このテラスがなんとなく好きである。
重厚で、実用的。無骨で、がっしりとした造り。
でも、今は何の役にも立たない。こんな無駄なものが、
なぜかわたしをほっとさせる。

このテラスの手すりに、一羽の鳩が羽を休めていた。
窓越しに、わたしと目が合う。

鳩はぽってりと太っていた。
太っている以外には、何の特徴もない地味な鳩で、
羽の色も、どぷ鼠のようなくすんだ灰色である。

ところが、この鳩、愛嬌だけはたっぷりとあった。
手すりの通路を、あひるのようにちょこちょこと歩いては、
ときどき足を止め、きょと、きょととあらぬ方向を睥睨する。

やがて、後ろの羽を、孔雀のように、扇形に広げ、
ボディビルダーがポーズをとるようなしぐさで、翼をいからせて、
さかんにわたしにデモンストレーションを仕掛けるのである。

わたしも、飽きることなく、このひょうきんな太った鳩に付き合っていた。
そのときである。鳩の２本の足の間から、
ちらりと赤いものが見えた。

近所の庭木の紅葉したもみじである。
下のラインは手すりのレンガ、縦のラインは鳩の２本の足、
そして上のラインは風に微動する鳩のおなかのうぶ毛。
そんなちいさな四角形のフレームから、真紅のもみじが見えたのである。

この、フレームから彦根城を覗いてやろう。
ふとそう思いついて、腰を低く屈めた。
そして晩秋の彦根城を、鳩のフレーム越しに見事に捕らえたのである。

わたしは、心のなかで繰り返しシャッターをカシャカシャと切りつづけた。




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ｓｃｅｎｅｒｙの風景

芸術の秋と、昔はよくいったような気がしましたが、
最近はあまり耳にしなくなりましたね。
経済、経済で、芸術どころではないのでしょうか。

わたしは、芸術と呼ばれるカテゴリーの中では、
小説や詩を別にすれば、絵画や写真を見るのが好きである。
わたしも、デジカメで頻繁に写真を撮ってはいるのだが、
適当にシャッターを押しているだけなので、
ろくなものが撮れない。

やはり、感性、根気、情熱、そしてなによりいい機材も必要なのでしょうね。
今回のシーンも、実際に写真にしてみれば大した事はないのかもしれません。
私の場合、やはり、決定的なシャッターチャンスは、
目に焼き付ける。そしてそれらを思い出しながら、
絵画で色をつけるように、言葉で再構築していくという作業の方が
似合っているのかもしれません。

でも、すてきな写真も撮って見たいです。
そして、高級な一眼レフのデジタルカメラもぜひ欲しいのです。



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