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　　　　　　　　　　　　日常の風景　　　NO.0021
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風を感じる

蒼穹高く、すばらしい天気に恵まれた日曜日。

「朝から３回も洗濯機を回したわ」
と、やや厭いた顔をしている妻の顔を見ていて、
ふと、気まぐれに思いついた。
いつもの愛用のベンチに妻を招待しようと。

昼食を外で取ることを提案すると、すぐに乗ってきた。

２台の自転車で目的地に向かう。
途中のコンビニで弁当２つと、５００ｃｃの発泡酒１本。
それにペットボトルのお茶を１本購入する。
これ以上倹約のしようがないささやかなピクニックである。

桜の若葉がつくる、やさしい木蔭のしたでとるお弁当は、
いつも以上においしかった。
いつもと違い、話し相手が隣にいる上に、
よく冷えた、発泡酒があった。

野外と室内との最大の違いは風だと思う。
ベンチに座っている間、ずっと風を感じていた。

ベンチの前は堀である。
堀の蒼い水に石垣が映り、それが風により細かく波立っている。
その上を、水面にとどかんばかりによく伸びた、
桜の無数の若葉が、風にひらひらと震えている。

ベンチの足元は明るい茶色に舗装された遊歩道である。
陽射しの強い、木洩れ日が明暗の強い、
不思議な模様をつくっていて、常に、微妙に動いている。

食事が終わると、ふたりはそれぞれ、
携えてきた、本を開けた。

若いときとは違って、
ベンチで話し込むそれほどの話があるわけではない。
行く前に、どちらからともなく、それぞれの本を持参していた。

風を感じながら、静かなひとときが流れてゆく。

ふと、隣のひとが何を読んでいるのか気になって、
目を凝らして表紙を見ると、
藤原伊織「雪が降る」とあった。
わたしが、一度も読んだことのない作者である。

「雪が降る」から、しおりの紐がたれていて、
風にまかせて、ひらひらと面白い動きをしていた。
夫婦は、風のような関係がいいのかもしれない。
しおりの紐を眺めながらふとそう感じた。



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ｓｃｅｎｅｒｙの風景

わたしが、持っていった本は、
娘が、面白いからと家に置いていった本。
京極夏彦の「ルー・ガルー」です。

読みやすい文体だが、若い頃とは違い、
想像力が乏しくなってきたのか、
超未来の物語の中になかなか入って行けない。
読み続けようかどうか迷っている。
その点、隣の人の藤原伊織は、経歴を見てみると、

直木賞作家で、ちょっと借りて拾い読みをしてみると、
なかなかおもしろかった。

短編集なので、そのなかの「ダリアの夏」を
京極夏彦を横においたままベンチで読んでしまった。



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