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　　　　　　　　　　　　日常の風景　　　NO.0032
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ケベックでの昼下がり

風を感じながら、街路に面したレストランのテラスで食事をするのが、
こんなにも心地よいものだとは思わなかった。

ここは、カナダのケベック市。
シャトー・フロントナックという大きなお城のようなホテルを目前に見上げるレストラン。
街の観光の中心地である。

街路に、赤いおおきなパラソルをいくつも立てかけた、おしゃれなテラス。
席に着いているわたしたちの前を、世界各国の人々が通りすぎる。
フランス語、英語、スペイン語などが乱れ飛ぶ。
わたしたちは、彼らを見る。彼らはわたしたちを見る。

レストランの斜め横では、
ちょんまげみたいに髪を無造作に後ろで束ねた似顔絵描きが、客待ちをしている。
客寄せの、精密に描かれたハリソンフォード、トムクルーズの似顔絵が、
木漏れ日の強い陽射しをうけてかがやいている。

レストラン前にはミニハープを弾く、ストリートミュジシャン。
ブロンドのロングヘアーがよく似合う若い女性の音楽家で、
ロマンチックな、ちょっとけだるいハープの音色が耳にここちよい。

チャーミングなハープ奏者は、わたしと目が合うと、にこっと笑って、
「上を向いて歩こう」を奏ででくれた。

ここまで、サービスをされると、小銭を入れに行かざるを得ない。
専属の音楽師付きの贅沢な時間。それほど贅沢でない食事。
いい感じで時間がながれてゆく。

似顔絵描きは、客を求めてきょろきょろとしていたが、
やがて、ひとりの若い女性を捕まえた。

彫の深い整った顔立ち、ポリュームのある金色の髪の毛。
白いセータに、黒いスラックス。
絵描きの前に座った、その姿は堂々と自信に満ちて、まるでモデルのようである。
絵描きが筆を走らせると、たちまちまわりに人垣ができた。

さきほどからじっとその様子を眺めていた相棒が、
「あの、絵描きのお客、サクラよ」といった。

サクラでも何でもいいじゃないかと、わたしは思った。
どうりで、ふたりはケベックの昼下がりの風景に似合いすぎるほど溶け込んでいる。



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ｓｃｅｎｅｒｙの風景

５日間もらえる夏休みを、同僚に目立たないように、
じっとためておいて、９月１３日から一気に取った。
間に祭日が挟まるので、連続１１日間の休暇である。

カナダの紅葉を見たいというのが長年のわたしの夢のひとつであった。
だから、今年はカナダ旅行を計画したのだが、
カナダはなかなか安いツアーがない上、日程もぴったりしたものがなかった。

仕方なく、個人旅行に切り替える。
トロント往復７万５千円というエアチケットを見つけた。
カナダ国内での移動は、グレイハウンドのバスが７日間乗り放題という、
カナダパスを２万３千円で購入。

基本的にはこれで旅ができる。
後は、現地で安めのホテルを探すだけである。
こうして、トロント、ナイヤガラ、モントリオール、ケベック、オタワと
回ってきた。

楽しみにしていた、メープルリーブの紅葉は、
今年は時期が早すぎて見ることができなかった。
木々は青々と茂っていた。

だから、紅葉を見るために予定していた、
ロレンシャンにもアルゴンキン州立公園にも行かなかった。

その代わり、予定になかったケベックに２泊した。
上記のカナダの街のなかではケベックが一番印象に残った街だったから、
紅葉のことは、残念ではあったが、好い旅だったと思う。

大体、夢と言うのはかなってしまえば、そこで歩みが止まる。
紅葉が見られなかったということで、いつかまた再び、
訪れられそうな予感がする。

ケベックの写真のリンクを貼る予定でしたが、
１１日間も休むと、さすがにしわ寄せが来て、
写真の整理にまで、手が回りません。次号に掲載する予定です。



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