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            日常の風景   NO.0049
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地球とロ−プ

二階のわたしの部屋の電話がかわいい音を立てる。
パソコンのすぐ横にある電話に目をやった途端、
一回鳴っただけで、すぐに、鳴り止んだ。

階下のひとが電話を先に取ったのだ。
一呼吸おいて、再び内線の呼び出し音が鳴る。

小気味のいいリズムが電話を中心にしてながれているようだ。
電話に出ると、「Nさんという人から電話」と階下のひとが言った。

Nさん?だれも思い当たらないが、ひよっとしてあいつかなと、
もう10年以上も出会ったことのない、同級生を思い浮かべた。
「おーい、ワシや」という声は紛れもなく、彼だった。

用件は、わたしの会社のサービスに関することで、
幸いわたしにも答えることができた。
彼の用件はすぐに終わってしまったのだが、それから30分近くも話し込んでしまった。

ずいぶん昔のことだが、彼に関してはひとつの鮮烈な思い出がある。
前後の様子はすっかり忘れてしまったのだが、
わたしは彼にある問題を出したのである。

地球いっぱいに一本のロープをぴったしと巻きつけたと仮定する。
その地球いっぱいロープに10メートルのロープを継ぎ足したとすると、
いままで、蟻の通る隙間もなかった地球とロープとの間に、
多少の隙間ができる理屈になるやろ。
さて、この隙間どのぐらいになるでしょう?

という、問題だった。
結論からいうと、これは約1.6mの隙間になるのである。

以下、中学生の数学でも苦手だという人は省略して読んでください。
地球の半径を r とします。
地球に10メートルを足した、ちょっと大きい方の半径を R とします。
R - r が、求める隙間になるはずです。

円周を求める式は 2πR でしたよね。
だから、10mロープを加えた円周 2πR から 
地球の円周2πr を引けば10mになるはずですね。
これをきちんと数式に書き換えると、

2πR - 2πr = 10
2π(R - r) = 10
   (R - r) = 10 / 2π

求める答え(R - r)は、πは3.14ですから約1.6mということになるのです。

でも、当時の彼はどうしても信じなかった。
そんなばかなはずはないと言い張ったのだ。
わたしも若かったし、これだけ説明してもわからないのは、
馬鹿だと、激しい口喧嘩になってしまった。

でも、歳月を経た今なら、よくわかるのである。
そんなはずはないと、人のこころの感覚でがんばった彼のほうが正しかったのだと思う。
数学の記号を盲信していたわたしの方が馬鹿だったに違いない。

彼は今でもこのことを覚えているだろうか。



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sceneryの風景

数学の記号で記述されたものを、鵜呑みにするのはかなり危険だと思う。
上記の問題でも、対象が地球ではなく、サッカーボールだとすれば、
誰でも納得ができるはずである。

サッカーボールの円周に10mのロープを加えれば、
かなりの隙間ができるに違いない。

でも、数学の記述では地球も、サッカーボールも記号化して、
同じ物として扱われる。

現代科学のベースもこの記号で成り立っている。
科学は間違いなく人間にとり便利な道具ではあるが、
人のこころから大きくかけ離れた科学は危険そのものでもある。

クローン人間しかり、ハイテクで装備されたアメリカ軍の力も、
はらはらさせられるほどに危うい。

3/16日の毎日新聞、「時代の風」に高樹のぶ子さんの
論評が印象的だったので、その一部を勝手に引用させていただくと、

偵察衛星や偵察機だけでは詳細な大量破壊兵器のリストは作れない。
結局のところそれを可能にするのはイラク人の「心の協力」であろう。
どんなに高度な技術があっても、イラク人の中に「新米の情」が無くては、
手に入らない情報がある。
そしてその情報こそ、イラクを変える力になるのだ。
だが、それは育っていない。育てようともしてこなかった。
アメリカが所有する情報は所詮技術を駆使して入手したものでしかなく、
「人の心」を通して得た、血の通った情報ではないということだ。

ついつい話がこんなことになってしまいます。
もっとのんびりとした、あたたかいはなしが書きたいです。



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