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            日常の風景   NO.0045
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エントロピーのはなし

「エントロピー」という用語を、なんとなく耳にされた方は多いと思います。
いつもの「日常の風景」とは、ちょっと違うテーマなのですが、
これも、sceneryさんの心象風景だと思って付き合ってください。

「社会システム論」の講義で、このエントロピーのはなしをはじめて聞いたとき、
なんと、文学的で人間的な法則だろうと、衝撃を受けたのを今でもおぼています。

「エントロピー増大の法則」というのは、
わたしの言葉でいいかえれば、
「形あるものは、いつかかならず壊れる」というだけの法則です。

もちろん、超難解な数式が山ほどある、歴然とした科学論理なのですが、
ひとことで言えば「諸行無常」という仏教の教えを数式化したものにすぎません。

たとえば、家の中に、立派な机があるとします。
外部から電気などのエネルギーをまったく補給することなく、
そのまま放置すれば、多分1000年ぐらいは、机として形をとどめているでしょうが、
1万年後ならどうでしょう。10億年経てば、間違いなく影も形もないでしょうね。

「エントロピー増大の法則」を説明するのに、
よく、コップの水の中に一滴にインクを落とした場合が、例として取り上げられます。
水に落とされた赤いインクは、最初は、インクと水とがくっきりと分かれていますが、
やがて、水全体が、うすいピンク色に染まって安定します。

「エントロピー増大の法則」は、また別の言葉でいいかえれば、
宇宙の平均化の法則ともいえるのです。

宇宙の平均化というのは、こういうことです。
山があり、海がある、この地球。山と海は、凸と凹ですから、
やがては、山は削られ、海は埋まって行く。
そのような、歴然とした平均化の法則が、宇宙には働いているということですし、
それは、感覚として素直によくわかることです。

宇宙全体からすれば、地球そのものも、異物には違いありません。
やがては、こわれて、宇宙の平均化の法則に呑み込まれてゆくでしょう。

一個の水素原子ですら、異物ですから、時間が経てば壊れて行く可能性もあります。
まだ、発見はされていませんが、陽子崩壊論の有力な論理的根拠にもなっています。

つまらないことを長々と書いてきましたが、
「日常の風景」40号「ろうそくの灯かり」のなかで、
わたしは神の存在を信じるほうの人間なのです。
と、書いてから、わたしは実際どのような神を信じているのだろうと、
ときどき考えていました。

放ったらかしにしておけば、秩序あるものは、無秩序の方向に自然に向かうという法則。
片付けた部屋が、すぐに散らかってしまうのも、「エントロピー増大の法則」です。
こんなに、わかりやすい、感覚的にも納得できる法則ですが、
実は、2つだけ、法則から外れた、例外があるのです。

それは、ビッグバンから宇宙が誕生した直後に、
星雲のもとになる物質が誕生したことです。
コップの水の中に、赤いインクを落としたとして、水がピンク色に染まる代わりに、
赤い粒粒が、透明な水の中に残ったようなものですから。

それと、もうひとつが生命の誕生です。
どのような、偶然にせよ「歴然とした意思」が働かない限り、
無秩序の方向に拡大しようとする物質どうしを混ぜ合わせても、
無秩序から、秩序ある配列には並びようがないのです。

多分、地球上の最初の生命は、遠い宇宙から、
隕石によって運び込まれてきたものでしょう。
でもその元になった生命体のことを考えると、同じことです。

この2点に関してわたしは「神の存在」
言いかえれば「宇宙の意思」といったものを感じるのです。



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sceneryの風景

じつは、いちど「sceneryの風景」のほうに、
上記のことを気軽に書き始めたことがありました。
しかし、短くコメントとしてまとめるには、手におえなくなってしまったのです。

だから、ルール違反ではありますが、あえて本文にしました。
いつもの「日常の風景」とは、スタイルが違うので、なんだこれ、と
思われた方、どうかお許しください。

次号からは、また、いつものなんでもない日常のスケッチに戻ります。



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