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            日常の風景   NO.0050
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花霞(はながすみ)

彦根城の堀端にある桜並木は、まだ花が咲いていない。
だが、仕事を終えての帰り道に、
その桜並木を遠くから眺めると、ほんのりとあかい霞がかかったように見える。

ああ、これが花霞(はながすみ)という日本語の現象なのだと
念のため、家に帰って「広辞苑」で調べてみると、違った。

はな‐がすみ【花霞】
遠方に群がって咲く桜の花が、一面に白く霞のかかったように見えるさま。
と書いてある。
花霞とは満開の花々をもっと遠くから眺めたときの印象らしい。

でも、この時期の桜、春のオーラが樹全体に立ち込めている。
命の精気、希望の予感のような、濃密なくうきが樹の周りに放射されている。
わたしにとっては花霞ということばがこそがぴったりである。

遊歩道に伸びている、桜の枝を手元に引き寄せ、
詳細に観察すると、硬いつぼみのなかから、
あかいものがすこしだけ顔をのぞかせているのである。

淡いピンクではない。先端の赤は、エネルギーが充填され、濃縮されて、
椿のはなびらのような、鮮烈な赤なのである。
いたずらを叱られた少女が、あかい舌をちょろっと出したという風情に見える。

わたしはこの時期、開花直前の樹全体の緊迫感も大好きである。
心和む、おだやかな霞のなかを家に向かうとき、
花も咲いていないのに、ひとりでに、こころが弾んでくる。

少年の頃の、夏休みや冬休みが始まる、
2、3日前の気分に似ているとふと思った。



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sceneryの風景

花で思い出しましたが、
花と鼻はおなじ語源だということをご存知でした?

ハナとは、もともとは物事の始まり、最初のことです。
「ハナから調子がいい」「聞いたハナから忘れる」といまでも使われています。
「寝入りバナ」とか「出バナをくじく」などともいいますね。

それが先端部。突端、はしの意味でも使われるようになりました。
人の鼻も、顔の突端という意味で、鼻になったと聞いています。

そして、花は春の先触れで花となったらしいのです。

語源の説は、そのほかいろいろとあるのでしょうが、
わたしは、春の先触れ、の花を信じています。
この時期、特に。



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