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            日常の風景   NO.0046
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残雪と水仙

わたしたちのバスは若狭街道を小浜に向かって、ひたすら北上する。
1570年、織田信長が朝倉軍と浅井軍との挟み撃ちにあったとき、
少人数の騎馬勢と共に、京都まで駆け抜けた街道である。

友人に、越前海岸の水仙を見に行く、バスツアーに誘われた。
今まで、国内のバスツアーに、個人で参加したことは一度もない。
でも、友人の誘いを、機会ととらえて、喜んで参加することにした。

通称、1000万本の水仙が、この2月に咲いているという。
当日は、残念ながら、雨模様の曇り空であった。

さすがに、北陸地方である。
バスが、若狭街道の峠道を越えようとしているとき、
右に左に残雪が見えた。

峠道は木々で明かりがさえぎられ、うす暗いが、
雑木林の、枯草の上にふんわりと残った雪は、
真っ白で、その部分だけ、ふしぎな明るい彩りが感じられる。

残雪は、それぞれが奇妙な形状をしていた。
世界地図のようである。大陸があり、海岸線があり、
複雑な形の半島がある。大陸の所々にはおおきな湖まである。

峠を越え、バスが平坦な田んぼ道を走る頃になると、
バスの暖房と、満席の人の体温で、窓ガラスが曇ってきた。
田んぼの残雪の中をバスが疾走すると、まるでふわふわとした
雲の中を走っているような、いい雰囲気である。

期待していた、越前海岸の水仙を見る時間帯は、
残念なことに、雨が本降りになっていた。

1000万本の水仙と聞いたとき、
わたしは心の中で、北海道のラベンダー畑のようなイメージを膨らませていた。
でも、北陸地方の越前海岸の水仙は、まったく異質のお花畑である。

海岸線を押し出すようにして切り立った、険しい山の斜面に、
へばりつくようにして咲いている、水仙の群生が、
ところどころ、点々とどこまでも続いているという感じである。
いわゆる、ビューポイントというものが、ほとんどない。

水仙は、香りはいいが、派手さはない、地味な花である。
群生している水仙は、色のくすんだ緑のうえに、
印象の希薄な平凡な白い花弁が必死でしがみついているという風に見えた。

でも、2月である。
寒風吹きすさぶ、北陸の海岸線の山の斜面に、花を群生させている。
この、必死さ、けなげさは、見た目以上に、ある種の感動をおぼえさせる。



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sceneryの風景

日曜日のテレビ番組、
「報道2001」を見ても、「サンデーモーニング」を見ても、
「日曜討論」を見ても、「サンデープロジェクト」を見ても、
世界情勢はイラクとの戦争。北朝鮮の核。
国内情勢は深刻なデフレ。
今にも、世の中が壊滅でもしそうなほど暗いニュースばかりである。

でも、庶民というのはどこの国でも、案外とたくましく生活するものである。
今回参加した、日帰りのバス旅行も、満席だったし、
それはそれ、あれはあれというのが、庶民の知恵というものであろう。

世界中で、市民レベルの反戦デモが繰り広げられているが、
行動を起す。ああいう場所に具体的に参加するという人を、
わたしは心から尊敬している。

もし、深刻に心配するだけで、何の具体的な行動も起せない、
わたしを含めての多くの庶民であるのなら、
事件が起こってから考えても、充分に間にあうものばかりである。

それより、気楽に遊びません?
気持ちだけでも明るく振舞いません?
やせがまんでもいいから、元気な振りをしませんか?

行動できない、参加できない庶民ができることはそれぐらいだと思うのです。
少なくとも、遊びに参加すれば、デフレ退治に多少の社会的貢献はしたことになります。

わたしの友人で、このメールを読んでくれている人。
たのしく遊ぶ機会あれば、ぜひ、声をかけてください。
余程のことがない限り、断らないつもりです。

結果的につまらなかったとしても、つまらなかったという経験が、
たのしい思い出になることもあるのですから。



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