*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*
            日常の風景   NO.0053
*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*

止まった時間

いつもの通勤の道なのに、今朝はふしぎなものに
ふたつも出会ってしまった。

わたしの目の前で、桜の花びらが空中の一点を、静止したまま、
くるくると風をうけて華麗に回っている。
それはまるで、理髪店の店先で、
回りつづける3色のサインポールのように見えた。

「ちょっとお兄さん、見てゆきなさいよ」
花びらのサインポールは、わたしのためだけにくるくると回りつづけた。

花びらの看板の真下には、
5枚の花びらが、バランスよく、空中に静止していた。
そのスポットだけ時間が止まっているのだ。

「どう、お兄さん。ちょっとすごくない?」
花びらのサインポールは回りつづける。

ビデオテープの静止画のように。
誰かが再生のスイッチをいれれば、
また、はらはらとそのまま散って行きそうな、瞬間の時間で止まっている。

もちろん、種明かしをわざわざするまでもなく、
くもの巣に桜の花びらが捕らえられているだけの風景なのだが、
見る角度によって、くもの糸はまったく見えない。

彦根城のお堀の水の上は、時間を止めることが出来なかった、
花びらであふれている。

そんなお堀の花びらを見ているとき、
お堀を泳ぐ、大きな鯉が、お堀に浮かぶ花びらを、
口をいっぱいに開けてぱくりと食べるのを目撃した。

何かのえさと間違えて食べたのではない。
その後、3回も悠然とした動作で、花びらを飲み込むのを目撃したから、
桜の花びらを食べる変わり者の鯉も間違いなく存在するのである。

何千回と通った、いつもの通勤ルートで、
こんなあたらしい発見のあった日の朝は嬉しい。

会社に着いて、着替えのために、背広を脱ごうとしたとき、
わたしの肩にも、桜の花びらが一枚ついていた。
鯉の気分になって、迷わず口の中に入れて、噛みしめてみた。
行く春を惜しむような、ほのかな苦味が口に広がった。



----------------------------------------------------------------------
sceneryの風景

不安定な世界情勢。厳しい経済状況。
有無を言わせぬ、リストラ、奪われる職場。厳しい労働環境。
このような情況で、いまさら、「花鳥風月」でもないじゃないかという、
厳しい、ご批判を、間接的にいただくことがあります。

でも、こんな出口の見えない厳しい世界情況だからこそ、
日本の文化のもつよき伝統「花鳥風月」を思い出す必要が
あるともいえるのではないでしょうか?

いいかえれば、こころの遊び、余裕といったものです。
四季のある日本人の感性、風雅を楽しむにはお金はそれほど必要ないのです。
今、世界が混沌としているのは、アメリカンスタンダード、
アメリカ原理主義ともいえる、力とお金がすべての価値基準という
根本的な間違いだと思うのです。

国全体が、昔のように貧乏にならざるを得ないのでしたら、
それも、またよしです。

わたしの子供時代は、テレビはもちろん、
ラジオもわたしの家にはありませんでした。
もちろん、ラジオぐらいは、お金持ちの家にはあったのですが、
わたしに家にはありませんでした。

テレビの代わりとして、楽しみにしていたのが、
紙芝居です。拍子木の音、水あめ。おじさんの名調子。
自転車に乗せられてやってくる紙芝居を、近所の子供みんなが楽しみにしていた。

子供時代のノスタルジーをなつかしがっても仕方がありませんし、
又、あの時代の生活に再び戻りたいとも思いませんが、
地球環境のことを考えても、今、政府がすべきことは、
ゆっくりと、みんなの生活レベルをすこしずつ下げていくことだと思うのです。
高度成長時代が異常だったのです。


アメリカとイラクの戦争について、
作家の池澤夏樹さんが、すばらしいメールマガジンを発行されています。
もし、時間があれば、

バックナンバーをすこし読んでみてください。
http://www.impala.jp/century/index.html

特に戦争が終わってからの、コメント、ナンバー99号のアメリカへの批判は
さすが、作家の表現力はすごいと感じました。



----------------------------------------------------------------------
発行者 scenery
north@arion.ocn.ne.jp
HP 日常の風景
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/

----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、

『パブジーン』 (マガジンID: 15730)   http://www.pubzine.com/
『メルマ』  (マガジンID: m00050779) http://www.melma.com/
『まぐまぐ』 (マガジンID: 79888)    http://www.mag2.com/
『メルマガ天国』(マガジンID: 8289)    http://melten.com/
『E-Magazine』 (マガジンID: scenery1) http://melten.com/
『Macky』 (マガジンID: scenery) http://macky.nifty.com/
『カプライト』 (マガジンID: 4327) http://kapu.biglobe.ne.jp/
『めろんぱん』 (マガジンID: 2179) http://www.melonpan.net/

を利用して発行しています。

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンの退会・解除は
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/  からお願いします
----------------------------------------------------------------------