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            日常の風景   NO.0062
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デスクーペ

「はい、**担当sceneryです」
職場で電話をとるときは、できるだけ明るい、張り切った、
元気あふれる爽やかな声でとるよう意識している。

もちろん、気分がいい日ばかりではない。
滅入ったり、落ち込んだり、いらいらしているときもあるのだが、
形だけ、元気そうにつくろい、演技をし、芝居を続けていると、そのうち、
ほんとに元気になってくるという経験をいままでに何度も繰り返してきた。

その日も「はい、**担当sceneryです」と電話にでたのであるが、
受話器の向こうからは、
「#$%&*+@!#$%&*+@!・・どしてですか?」
「・・・・・・・・」
「#$%&*+@!#$%&*+@!・・どしてですか?」
と、かなりの怒気を含んだ外国人男性の声が聞こえてきた。

こころの準備ができていなかったわたしが理解できたのは、
「どしてですか?」という日本語だけである。

英語圏の外国人ではない、スペイン語かポルトガル語。
多分、ブラジルから単身で出稼ぎにきている、30歳半ばの男性。
それによくよく聞いてみれば、
彼は彼が使える精一杯の日本語で話しているのである。

電話が使えなくなってしまったという、
抗議であるのはなんとなく理解できた。
よくあるケースではある。

日本に出稼ぎにきている外国人は、もらった給料は、
ほとんど本国の家族に送金しているような気がする。

唯一の楽しみが、本国の家族である妻や子供の声を聞くことだとすれば、
ついつい、国際電話の料金は高いとは知りつつも、長電話になってしまう。
そして、電話料金が支払えなくなり、
電話が切られてしまうというケースである。

電話が止った理由を、ディスプレイの画面を見ながら、
できるだけわかりやすい日本語を繰り返して説明した。
でも、わたしの日本語が理解できなかったのかも知れないが、
彼は納得しなかった。

そのときわたしは、先週のポルトガル語教室で習ったばかりの、
「デスクーペ」(すみません)という言葉を思い出したのである。
そして「どしてですか?」の後に「デスクーペ」といってみたのである。

微妙な沈黙の後、彼は「ふふん」と笑った。
あきらかに、お互いに緊張しているくうきがふっとなごんだのを感じた。
そして彼は「いーです」といった。

そこまでは、大成功なのであったが、
この場で使えるわたしの次ぎのポルトガル語は
「アテ・ローゴ」(さようなら)しかなかった。
そこで「アテ・ローゴ」と続けたら、
「チャオ」という返事がかえってきた。

受話器をなんとなく気分よく置きながら、請求書をすぐに送りますから、
お近くのコンビニエンスストアで支払ってくださいという、
いちばん肝心なメッセージを彼が受け取ってくれたのかどうか、
すこし気になった。



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sceneryの風景

前にも書いたように、夏休みを9月まで、ためておいて、
ポルトガル旅行を計画している。
いつものように個人旅行である。

旅行を計画するまでは、ポルトガルの首都がリスボンであるぐらいしか、
知らなかったのであるが、いまはかなり詳しくなった。

個人旅行で事前に必要な知識は、
空港から市内へのアクセス方法。どのあたりに適当なホテルがあるか?
限られた時間での、観光のポイントはどこか?
次ぎの観光地への移動は、バスか列車か。バスターミナルは?列車の駅は?
ぐらいの知識がまず必要である。

わたしは、ツアーでも、何度も旅行したが、
ツアー旅行はかなりグレードの高いホテルが多いが、
ロケーションがほとんど中心地から外れた、不便な場所が多い。

その点、個人旅行なら、街の中心地のエコノミーなホテルを自由に選べるので、
訪問する国の生の雰囲気を味わうことができる。

「地球の歩き方」などを詳細に読んでいると、
もう、ポルトガルに行く前から、街のイメージが頭の中に出来上がり、
後はもう、それを確認に行くだけの旅のような気がする。

旅好きのわたしは、この時期が一番楽しい。
すべての旅行記を今のように真剣に読むことができれば、
本と、写真集だけで世界旅行ができてしまうのだが・・



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