*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*
            日常の風景   NO.0061
*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*

学校に行きたくない

「お父さん、僕今日、学校に行きたくない」
家族みんなが、あわただしく朝の食卓につこうとしているとき、
小学校3年生になる息子が、暗い顔をして、力なくボソッとつぶやいた。

わたしの家の話ではない。
たとえば、小学校の息子にこういわれたとき、親はどのような態度をとり、
どのようなことばを息子に返せばいいのか?
いまはやりのワークショップ(体験学習)に参加したときの課題である。

ワークショップのリーダである、講師のIさんの話し方は卓越していた。
NPOに所属され、海外での生活も長く、
いわば筋金入りの市民活動家にもかかわらず、
豊かな表情に内面のしなやかな強さとやさしさとがにじみ出ていた。

このワークショップに参加したのは約20名。
ほとんどが初対面のものばかりで、
女性の姿が多少、多いという点を除けば、
年齢も20代から60代までばらばらであった。

このようなグループに、自由にディスカッションさせようとするのは難しい。
だが、講師のIさんの雰囲気作りはみごとだった。

セオリー通り簡単な自己紹介からはじまったのだが、
Iさんは徹底的に相手の言うことを注意深く聞いて、
的を得た好意的な質問を的確に投げかえしたのである。
やがて初対面のみんなが自分のことをどんどん話すようになった。

5つつのグループに分かれて、登校拒否の問題を話し合った。
わたしは「どうしたの?」とやさしく声をかけて、
息子に熱などがないか、おでことおでこを合わせたり、
手を握ったりというような、身体的な接触を図りながら、
息子の話を聞くという案に賛成だった。

それぞれのグループでどのような話し合いがあったのか、発表があった。
「昔なら、どつきまわしてでも学校に連れて行った」という、
60代の男性の本音が、会場の笑いを誘った。

「ワークショップではこれが正解だという答えはありません」とIさんがいった。
一度「お父さん、僕今日、学校に行きたくない」と
わたしに向かっていってくれませんか、とIさんは前の席にいた、
中年の幼稚園の先生を指名した。

さすがに、幼稚園の先生である。
気後れすることなく、芝居気たっぷりに、
「お父さん、僕今日、学校に行きたくない」と応じた。

「そう、じゃどこに行きたいの?」
愛情いっぱいの声で、講師のIさんは答えた。
思いがけない答えが返ってきたので、幼稚園の先生は、一瞬ことばに詰まった。

すこしだけ、間を置いて、
「どこにも行かない、お家にいる」といった。
「そう、じゃいっしょにいよう」
間髪をいれず、爽やかな、あかるい声でIさんが続けた。

もし、幼稚園の先生の答えが、
「遊園地に行きたい」という答えだったら、
間違いなくIさんのせりふは、
「そう、じゃいっしょに行こう」だっただろうことは、
会場のみんなが瞬時に理解した。

小学生の子供が、一日か二日、学校を休んでも、それほどたいした問題ではない。
まして、父親が、子供といっしょに会社を休んだとしても、
長い人生、それ以上にたいした問題ではないのだ。



----------------------------------------------------------------------
sceneryの風景

平凡な日常に、自分でメリハリをつけようとすれば、
これはかなりのエネルギーが必要である。
それに、お金もそこそこかかりそう。

でも、もうひとつ、他律でメリハリをつけるという方法がある。
それには、人に何かを誘われたら、よほどのことがない限り
断らないというポリシーがいいのかもしれない。
これは、ほとんどの場合が無料である。

もともと、好奇心は人一倍旺盛な方なので、
結構いろいろなところから声はかかってくる。

文化講演会とかコーラスの発表会なら大歓迎であるが、
舞踊とかカラオケの発表会は
次ぎの機会には、何かの用事とかち合いそうな気が今からする。

今回のワークショップは流れで、用事を見つけそこなったやつであったが、
参加してほんとうによかったと思っている。

講師のIさんの名前は「池住義憲」という人で、年齢は50歳代。
わたしも実は知らなかったのであるが、
Yahooで検索してみると723件もの情報があったので、
全国的にはかなり有名な人みたいである



----------------------------------------------------------------------
発行者 scenery
north@arion.ocn.ne.jp
HP 日常の風景
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/

----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、

『パブジーン』 (マガジンID: 15730)   http://www.pubzine.com/
『メルマ』  (マガジンID: m00050779) http://www.melma.com/
『まぐまぐ』 (マガジンID: 79888)    http://www.mag2.com/
『メルマガ天国』(マガジンID: 8289)    http://melten.com/
『E-Magazine』 (マガジンID: scenery1) http://melten.com/
『Macky』 (マガジンID: scenery) http://macky.nifty.com/
『カプライト』 (マガジンID: 4327) http://kapu.biglobe.ne.jp/
『めろんぱん』 (マガジンID: 2179) http://www.melonpan.net/

を利用して発行しています。

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンの退会・解除は
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/  からお願いします
----------------------------------------------------------------------