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            日常の風景   NO.0069
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働かない働きアリ

新聞記事を読んで、ほっとするニュースが、ほんとうに少なくなった。
時代を反映しているのだろう。
ほとんどの記事がぎすぎすと尖っていて、遊びがない。

だが、最近うれしいニュースを読んだ。
働かない「働きアリ」も、という北海道大学の研究チームについてのニュースだ。

働きアリは、その一生を黙々と働きつづけるだけというのが、
わたしたちが持つイメージであるし、確か、学校の理科でもそのように習った。

だが、北海道大学の研究チームは、コロニーを形成する、アリの約30匹に、
マジックで目印をつけて、一匹一匹を識別し、
その行動を毎日3時間、5か月にわたり調べたというのである。

そうすると、働きアリの1割から2割が、
まったく働かない怠け者だということがわかったのである。

怠け者のアリは、ただうろうろと巣の中を歩き回ったり、一日中じっとしていたり、
自分の体をなめて、身づくろいをしているだけだったということが、
わかったというのである

エサは、エサを集めてきた働きアリから、口移しでもらっていた。
怠けアリや仕事熱心なアリをそれぞれ別々に取り出してみても、
やはり、怠け者は怠けたままで、ハードワーカーは働き続けたという。

「優秀な個体だけでは、集団の生産性は最大にならないことがわかってきている」

このような、研究から上記の大切な結論が得られた。
アリの世界の研究であるが、人間の社会でも同じだろうということは、
なんとなく、直感的に肌で感じることができる。

アリにマジックで印をつけて、その行動を観察するなんてことは、
幼児のような遊びのこころがなければ、続けられる研究ではない。
「競争」「効率」「能率」などとは無縁の世界のように思える。

わたしたちの人生から、無駄なものや遊びを取り上げてしまったら、
なんと味気のない人生になってしまうことか。

研究チームは「仕事をしないアリにも何らかの役割があるかもしれない」
と話しているが、きっと目に見えない役割があるに違いない。

たとえそんなものがなくても、怠け者のアリを排除するのではなく、
口移しでエサを与えるという、アリ社会の余裕、柔軟性は、
確かに優秀な個体だけの集団よりはしなやかで強そうである。

長く続けてきた、サラリーマン社会で、どちらかといえば、
怠け者のアリ科に属しているわたしにとって、
ほっとする研究のニュースでした。



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sceneryの風景

上記のニュースの続きです。
わたしのHP「レポート」の「ゲノムの解読についての雑感」からの一部を
以下に抜粋します。
もし、この話題について、興味と時間があれば、そちらを読んでください。

ダーウィンの進化論などもDNAレベルからの見直しがスタートしている。
生物の進化は優秀な種だけが生き残るというシステムには
なっていないという理論があたらしく確立されつつある。

劣勢な種も10パーセントぐらいは共存して行く種が、
いままで生き残ってきたのである。
ダーウィンの進化論はDNAの研究が進んだおかげで、
実験室で検証できる段階に進歩してきている。

たとえば、優勢な遺伝子をもった大腸菌50%と
劣勢な遺伝子の大腸菌50%をシャーレの中に入れ、数日間観察する。
ダーウィンの進化論なら、優勢大腸菌が100%になっているはずである。
ところが劣勢な大腸菌も10%は生き残るのである。

おもしろいことに、優勢大腸菌95%、劣勢大腸菌5%でスタートしても、
数日後にはやはり、優勢大腸菌90%、劣勢大腸菌10%で落ち着く。
大腸菌のDNA情報の中に共存のシステムが完成しているのである。

学者の話によると、長い進化の歴史で、
優秀な種で100パーセントという歴史もあったと思われるがが、
そのような種は一時期我が世の春を謳歌できただろうが、
地球の環境が激変した時点で、絶滅したと思われる。

劣勢が共存できるシステムであれば、たとえ、90パーセント絶滅しても、
残りの10パーセントでまた立ち上がる事ができるのだ。

このはなしは組織論にもあてはまるのではないかとわたしは感じた。
組織の効率のみを追い求めて、
異なった考えを持っている社員を異端児のように会社から追い払うような組織は、
柔軟性がなく、社会の環境、経済の環境、時代の風向きが大きく変われば、
ぽきりと折れてしまうかもしれない。

現在は、無駄な事に見えるかもしれないが、
多少の異端児は共存できる許容量の広いしなやかな組織、社会でありたい。



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