*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*
            日常の風景   NO.0071
*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*

黄色のホッチギス

すこし厚めの書類をホッチギスで留めようとして、
勢いよく、親指に力を込めた途端、
ホッチギスの針がなくなっており、空打ちになった。

わずか1cmほどのアクションだが、その感じは、
虚空に、何の抵抗もなく、すっと指先が吸い込まれたかと思うと、
すぐに、鋼鉄のような分厚い壁に跳ね返されたような感じがした。

軽い突き指のような衝撃と痛みを感じたので、
思わず「チクショー」とホッチギスを睨みつけたのだが、
もちろん、ホッチギスには罪がない。

罪がないどころか、手にとってよく見れば、
洗練されたうつくしい造形美をしている。

この黄色のホッチギスを、何年もわたしは愛用している。
もちろん、会社の支給品であったのだろうが、
もう、ほぼわたしのモノである。

ホーロ引きの光沢に、蛍光灯のひかりが断片的に白く写しだされるのが、
なんともいえず、うつくしいと感じられる瞬間がある。

わたしは掃除は嫌いだが、ごまかしの整理は得意である。

机の上には、百円ショップで買ってきた透明のB5のケースが置いてある。
そのなかに、はさみ、ホッチギス、クリップいろいろ。ステックのり、
マーカ、付箋紙。目薬、指サック、消しゴム。
ペン立てには、ボールペン、シャープペンシルが10本以上。

そして引出しには、書類止めのクリップ。ホッチギスの針。カッター。
FD、インデックス、定規、スタンプ台、爪切り、ドライバー、
単3電池、テレホンカード、私印など。

わたしの机の上や、引出しの中にある、文具の小道具達。
みんなそれぞれ造形的に機能的にうつくしく、愛らしい。

仕事中にもかかわらず、そのような文具をひとつひとつ、
芸術品のように鑑賞しているわたし。
すくなくとも、会社にとって有能で「出来る」社員でないことは確かである。

そして「働かない働きアリ」のことをときどき考えている。



----------------------------------------------------------------------
sceneryの風景

sceneryの昔からの文学仲間である、
鹿児島の立石富男(ペンネーム鮫島秀夫)が、
堺市が主催する自由都市文学賞を「ソロモンの夏」という小説で、
見事に獲得した。

選者は田辺聖子、藤本義一、眉村卓、難波利三とそうそうたる、
関西の作家である。

彼は、わたしのように途中でドロップアウトすることもなく、
会社を辞めてまで、小説に打ち込んでいたので、
仲間として非常にうれしい。

授賞式には、近畿のなかまと共に出席した。
興味のある人は、下記のURLにアクセスしてください。
sceneryも、後の方に一枚だけ顔を見せています。

http://www.geocities.jp/scenery_jp/tateishi/tateishi.html

授賞式のあと「発想と組み立て方」という題で、フォーラムがあったが、
4人の選者のおもしろいはなしがいろいろと聞けて、
有意義なフォーラムでした。

藤本義一は小学生の頃、作文で「不思議なもの」を書きなさいという
題を与えられ「靴下」と書いたらしい。
「靴下がなんで不思議やねん」という先生の問いに、
「あれは靴下ではなしに、靴中とちがうん」と答えて、
「お前は根性が曲がっとる」とこっぴどく叱られたらしい。

さすがに、作家の感性は、小学生時代からちょっと違うと思いました。

このように体験的で具体的な話を、作家から直に聞ける機会は、
ちょっとありませんでしたので、かなり刺激を受けて家に帰りました。



----------------------------------------------------------------------
発行者 scenery
north@arion.ocn.ne.jp
HP 日常の風景
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/

----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、

『パブジーン』 (マガジンID: 15730)   http://www.pubzine.com/
『メルマ』  (マガジンID: m00050779) http://www.melma.com/
『まぐまぐ』 (マガジンID: 79888)    http://www.mag2.com/
『メルマガ天国』(マガジンID: 8289)    http://melten.com/
『E-Magazine』 (マガジンID: scenery1) http://melten.com/
『Macky』 (マガジンID: scenery) http://macky.nifty.com/
『カプライト』 (マガジンID: 4327) http://kapu.biglobe.ne.jp/
『めろんぱん』 (マガジンID: 2179) http://www.melonpan.net/

を利用して発行しています。

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンの退会・解除は
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/  からお願いします
----------------------------------------------------------------------