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            日常の風景   NO.0075
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古木な疑問

穏やかなお正月が、仕事始めの今朝も、
まだ続いているということが、わけもなく嬉しかった。

仕事始めのこの朝が、もし吹雪とか、凍えるような極寒であれば、
怠惰な長い休みと、出勤との落差が大きすぎて、
絶えられないほどの苦痛になることは容易に想像できた。

冬眠から目覚めた熊が、春に初めて目にする風景のように、
いつもの遊歩道の風景がなぜか新鮮である。

お堀の向こう側に連なる、巨大な石組みの石垣。
その石垣の上にすっくりと並んでいる古木の並木。
それらが、お堀の水に佇んでいる。

お堀の水は、青空と、適当な白い雲を沈めていた。
その真々中をつがいの鴨が、すべるように泳いでいるのである。

鴨がつくる波紋と、微風のさざなみとで、
ちいさく輪郭のぼやけた、風景は、
まるで印象派の一幅の絵画のようにも見える。

わたしが歩く遊歩道側には冬の桜並木。
もう、ちっちゃなちっちゃな花の芽が、点々と桜の枝にくっついている。
それらはお堀の水に今にも触れんばかりに、
のびのびと枝を広げているのであるが・・・

そのときふと疑問が湧いたのである。
なぜ、堀端に植えられた桜は、根元より下に枝を伸ばすことができるのか?
平地の普通の土地に植えられた、桜が、古木になったからといって、
路に触れているのを見たことがない。

古木になれば、樹にも、おぼろげな感覚が芽生えるのかもしれない。
そして、かすかな意識のようなものさえあるのかもしれない。
今年最初の疑問としては、なんとなく悪くないテーマのような気がする。



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sceneryの風景

みなさん、あけましておめでとうございます。
「日常の風景」今年もよろしくお願いいたします。

題につけた「古木な疑問」は「素朴な疑問」をもじったつもりなのですが、
こうして、説明をしておかなければ、なんとなく不安を感じるということだけで、
もう、こけていますよね。

でも、ふしぎに思いません?
なぜ、根元より下に枝を伸ばすことができるのか。

もし、この疑問に科学的に答えられる読者がおられましたら、
ぜひ、メールをください。
インターネットのURLの紹介でもいいです。
ぜひよろしくお願いいたします。

このテーマでふと思い出したことがあります。
青春時代にわたしが熱中していた作家、石坂洋次郎が、
「もし、今度生まれ変わるのなら、人間ではなく、
200年も300年もゆっくりと生きる大きな樹に生まれたい」
といった言葉を。

彼も、大樹には、かすかな意識があるということを信じていた気配があります。

青春時代を石坂洋次郎に心酔していたと書けば、
年がばれてしまいますが、
実は、卒論のテーマに選ぶほどの熱中振りでした。

ちなみに、石坂洋次郎は
「若い人」「青い山脈」「陽のあたる坂道」などの
青春ものばかりを書いた作家のように思われていますが、
津軽出身で、破滅型の私小説家と同根の部分が大いにあるのです。
だから、あのような明るい爽やかな青春文学が書けたのかもしれません。
彼の晩年の作品はスカトロジーのようなドロドロとしたテーマばかりです。

すみません。なんか話が勝手にそれてゆきました。
今年もよろしくお願いいたします。



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