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            日常の風景   NO.0067
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ポルトガルのタクシー

司馬遼太郎さんも指摘しているように、
ポルトガル人の顔は種々さまざまである。
アングロサクソン系もあれば、スパニッシュ系、インド系、
イスラム系、アジア系、アフリカ系と一言ではとても言い表せない。

こんなに、小さな国が、一時期、世界の覇権を握っていたのである。
どんなかたちでもいい、とにかくポルトガル人という名のつく自国の人口を
なんとしてでも増やしたいという意欲の結果ではないだろうか?

その、タクシーの運転手の顔は、イスラム系だった。
無精髭げというのではないが、かみそりの刃がたたない部分に、
剃り残しの髭がところどころ見られるような、精悍で濃い顔だった。
どことなく愛嬌もあり、悪い感じでは決してなかった。

だが、この運転者、料金メータの下に表示される2という数字のまま、
タクシーを発進させたのである。
今日だけ、連続して2度目である。このような不正に出会うのは。

「おっちゃん、これおかしいのと違うの?」
タクシーに表示されている数字を指差して、
わたしは、わざと、関西弁でいってみた。

「そうや、絶対におかしいわ。旅行者やから知らんとおもて」
「今はまだ真昼間やのに」
後ろの同行者からも、応援の野次が投げかけられる。

ポルトガルのタクシーのシステムは、昼間の料金と、
夜の料金の2本立てになっていて、切り替えは夜の9時からである。
初乗りの料金も、加算される距離も変わってくる。

ガイドブックには、タクシーのこのようなシステムと、
悪質ドライバーに注意と書いてあった。
旅行者と見ると、昼間でも、夜のシステムで走るドライバーがいるらしい。

不正を見つけたら、とにかくその場で、日本語でもいいから抗議をする。
外国へ個人で旅をするのなら、大切な態度である。
このようなことは言葉の問題ではなく、気合の問題である。

ところが、このイスラムあんちゃん、身振り手振りを交えて猛烈に説明を始めた。
もちろん早口のポルトガル語である。
「エウ ナオン コンプリエンド」(= I don't understand.)とわたしが、
いくら繰り返しても、説明を止めようとはしなかった。
ついには、西洋人がよくやるように、肩をすくめて、両手を広げて見せたが、
同じことである。

でも、そのとき、ドライバーの説明のなかで
「ドミンゴ」「サバド」というポルトガル語を奇跡的に思い出したのである。
「ドミンゴ」は確か日曜日、「サバド」は土曜日の意味だった。

このたったふたつのキーワードがすべてのことを氷解させたのである。
旅行中は曜日にうとくなるが、そういえば、今日は土曜日である。
タクシーには、上記のシステム以外に、休日料金というものが
存在するということが、おぼろげながらわかってきた。

わかってみると、最初のタクシードライバーに、チップも渡さず、
みんなで、怖い顔をして、睨みつけるようにして料金を支払ったのが、悔やまれる。
運転手さん、誤解でした、ほんとうにごめんなさい。



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sceneryの風景

ポルトガルのタクシードライバーは、みんな話しが好きである。
でも、ほとんど英語は通じない。
だから、簡単な挨拶以外で、一番頻繁に使ったポルトガル語は
上記の「エウ ナオン コンプリエンド」だった。

それでも、一方的になにか話しかけてくる運転手が多かった。

それに比べて、街のポルトガル人は、あまり愛想はよくない。
「ボンジーア」(おはよう)「ボアタージ」(こんにちは)などといっても、
必ずしもリアクションがないのである。

あるホテルで、バスの出発が8時20分なので、8時からの朝食を
すこし早めにしてもらえないか?とホテルのオーナに申し出たことがあった。
にべもなく、断られた上、「あなた方が食べているのを、他の客が見て、
同じようにレストランに入ってきたら、どうなりますか」とまでいわれたので、
もう朝食はあきらめていた。

ところが7時50分頃、部屋のドアがトントンとノックされた。
先ほどのオーナである。朝食の用意ができたので、食べろという。
無表情で、無愛想であったが、わざわざ部屋まで、呼びにきてくれたのである。

ポルトガル人はシャイだと、司馬さんの本にも書いてあったが、
表現の仕方が違うだけで、本当は、親切な国民なのかもしれない。

ポルトガルでわたしが気に入ったオビドスの街の写真です。
街全体が城壁に囲まれていて、中世の街並みががそのまま、
タイムスリップしたような街です。

時間が許せば見てください。

http://www.za.ztv.ne.jp/magmaria/photo/obidos/obidos.html



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