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日常の風景 NO.0086
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雨上がりの相対理論
今頃の季節は、風さえなければ、静かに降る雨の朝も悪くない。
わたしが愛用する大きな雨傘にぱらぱと当たる雨音は、
まるで、昔の真空管式5級スーパラジオの雑音のように聞こえた。
いつものお堀端にでると、堀には無数の波紋が、
生まれては消えていた。
アメンボがたのしそうに、軽やかに水面を滑走している。
堀の中には、多少の雨はまるで関係がないとでもいうように、
大きな鯉がゆうゆうと泳いでいた。
お堀端にたたずんでいると、唐突に、お堀の波紋がすっかり消えてしまった。
そういえば傘の雨音も聞こえなくなった。
いつの間にか雨が上がったのだ。
ところが、ふしぎなことに気がついた。
桜の新緑の下だけが、さっきまでと変わることなく、
波紋がいくつも生まれては消えている。
新緑の葉っぱから落ちてくる、雨のしずくである。
雨が止んだにもかかわらず、
新緑の下だけが、まだ雨降りなのだ。
ふと、ここだけ時間が遅れているのではないかと思った。。
もし、生い茂る桜の枝がなければ、
数分前に、まっすぐに堀に落ちて、波紋になった雨粒。
桜の葉っぱにつかまり、落ちる予定だった場所がすこしずれ、
まわりの雨がすっかり上がってから、
しずくとなって波紋になっている。
雨の速度は、生い茂る桜という圧倒的な質量につかまり、
位置がゆがめられ、そして、時間も遅れた。
sceneryが発見をした日常の相対性理論。
雨の朝。
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sceneryの風景
お堀の鯉はゆうゆうと泳いでいるように見えましたが、
ほんとうは今大変なことが起こっています。
彦根にも鯉ヘルペスがやってきたのです。
2.3匹の大きな鯉がお腹を見せて死んでるのを、
毎日のように見ます。
鯉の世界にとってみれば、エイズと、新型肺炎と、狂牛病が
一度に襲ってきたようなさわぎのはずです。
でも、テレビのニュースで見たような、
何百匹も一度に死んでしまうという、現象が今のところないのが
救いです。
やはり、養殖の鯉のように、ほとんど同じ遺伝子を持ち、
同じえさを食べ、過密に育てられるのではなく、
彦根城のお堀の鯉は、いろんな種類の鯉がいて、
野生に近く、多様性に富んでいるということなのではないのでしょうか。
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