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            日常の風景   NO.0087
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蛇口のわたし

生ぬるいお湯にからだを浸してから、
ガスのコントローラに手を伸ばし、
おもむろに追い焚きを5分間セットする。

このひとときが、1日でいちばんリラックスする
瞬間かもしれない。

特に、仕事を終え、家に帰ってから、
何かまとまったことができたとき。

たとえば「日常の風景」を書き終え、配信も済ませてしまったとか、
話題になっていた小説を、やっと読み終えたとか、
気になっていた自治会の雑用がこなせたとか。

とにかく、会社のしごと以外のことで、
自宅でも充実した時間が持てた後のお風呂というのは
わたしにとり格別のひとときなのである。

風呂に入るのは、
家族が入ってしまったいちばん最後、午前0時前の仕舞い湯が多い。
昔の家長の基準からすれば、
だらしがないことおびただしいが、わたしは仕舞い湯が好きである。

湯につかるのは、なんの抵抗もなく入れる、生ぬるい温度がいい。
5分間追い焚きをして、いい加減になるぐらいがちょうどいい。
わたしの人生のスタイルそのものという気がしないでもない。

生ぬるいお湯を使う唯一の欠点は、
教育によって、人間を人間たらしめている、
大脳皮質までとろとろに溶かしてしまうことである。

日頃、眠っている思いもかけない妄想が、つぎつぎと浮かんでくる。
わたしの妄想に比べれば、植草教授の妄想なんて、
まったく想像力の欠如としかいいようがない。

そんな妄想と遊んでいたときである。
鏡のように光っているステンレス製の蛇口がわたしの
真正面を向いているのにふと気がついた。

大型のクレインのように、180度自由に角度が変えられるタイプのもので、
普段は、入浴の邪魔にならないように、正面を向いていることはない。

光った蛇口のあたまに、わたしの顔が映っていた。
ゆがんで、ひずんで、ムンクの叫びより悲惨な顔が映っていた。
妄想に熱中していたときなので、どきりとした。

自分自身にうそをついても仕方がない。
まえからわかっていたことであるが、
所詮それほど高尚な人間ではない。

そんな勝手な理屈をつけて、ひらきなおり、
うんうんと蛇口にうなずくと、長い顔がもっと長くなって、
今度は笑い出したくなるほど、滑稽でひょうきんな顔が映った。



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sceneryの風景

アフリカと南アメリカにはまだ一度も行ったことがないので、
つぎに旅行するのなら、このどちらかだと決めていた。

とろこがである。
パリとかサンフランシスコに行くのとは違い、
やはり人気がないのだと思う。

ツアーの料金を調べてみると、とてつもなく高いのである。
ひとり40万円から50万円が必要である。
ふたりで行けば、100万円ちかくかかってしまう。

いくら、旅行が好きだといっても、
この金額では無理である。

それではというので、得意の個人旅行でとすこし調べてみたが、
今度は日程が無理というのがわかった。

観光地化されていない地域への旅行は、
特別の趣があるのだろうが、
期間が10日と決まっていて、なにがなんでも、
この日に日本に帰らなくてはならない旅行の計画などは、
とても立てられたものではないということがわかった。

両方ともリタイア後の楽しみに取っておきましょう。

そこで、今年は、北欧に行くことに決めました。
ヘルシンキ、オスロ、コペンハーゲンを中心に、
計画を立て始めています。

北欧なら個人旅行で、なんの心配もしていません。
もう気分は、今から、アンデルセンのおとぎの国、
コペンハーゲンに飛んでいます。



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