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            日常の風景   NO.0083
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すずめと散る花

花びらはもう半分以上散ってしまったにもかかわらず、
彦根城の桜の木々は、ほんの数日前の
満開時の余韻のようなものをまだ残していた。

花びらのない無数の花托はまる熟れたグミの実のように赤く、
開花時とは、趣の異なった雰囲気を醸している。

出勤途中の足を止め、そんな桜の変化をしげしげと見つめていると、
わたしの頭上で、チ、チ、という鳥の鳴き声が聴こえた。
見ると、すずめである。
ぽっちゃりと丸く、よく太っている。

鳩胸ならぬ、豊かなすずめ胸を、誇らしげに突き出しながら、
首と尾を絶え間なく、小刻みに動かしている。

栄養の行き届いた、野の鳥を見ると、なぜか豊饒な感じで満たされる。
巷には、野鳥のエサになる、植物や昆虫があふれているにちがいない。

このすずめ、なかなか愛嬌のあるやつで、
太い枝に止まればいいものを、
不安定な、花の残り少ない細い枝を選んで、ピョコンととまる。

すずめの重みで、細い枝はしなるのであるが、
その反動を利用して、また次の細い枝に飛び移るのである。
そのたびに、未練なく、数枚の花びらが、枝を離れる。

すずめは花びらを落として遊んでいるように見えた。

舞い落ちる花びらのゆく先は、お堀の水の上。
お堀の水の上は、このようにして、すずめに落とされた花びらが、
まるで流氷のように積もっていた。

その、白い流氷を掻き分けるようにして、
つがいの鴨が仲良く、すべるように泳いでゆく。
戦前の日本の夫婦のように、雌が一歩下がって、
追って行く風景が、なんとも微笑ましい。



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sceneryの風景

できるだけ、なんでもない、なんにもない日常の、
明るい面だけをとらえて、書くことをコンセプトにしてきましたが、
この一週間の出来事については、ひとこと発言せずにはいられません。

まず、イラクの人質事件です。
わたしは、イラクに自衛隊を派兵したという事実が、
明確な憲法違反であり、大きな誤りだったという立場です。

しかし、テロの脅しに屈したかたちでの、撤兵はできないという
政治的な状況も理解するほうです。

しかし、川口外務大臣が、武装勢力にあてての、
ビデオメッセージには、いいしれぬ怒りが込み上げてきました。

「あなた方が人質にしている3人は、純粋の民間人でイラクの友人です」
このメッセージはいいコメントです。しかし、イラクの復興支援に触れた後、
「自衛隊もこのために派遣されているのです」と述べています。

人質の家族は、この自衛隊の部分は、犯人側を刺激する可能性があるので、
外して欲しいと何度も申し入れたにもかかわらず、
外務省、すなわち政府は同意せず、このまま放映されました。

人間の命が、今まさに危機にさらされているときに、
自衛隊の正当性をアッピールすることにどれほどの意義があるのでしょう。

確かに、自衛隊の撤兵をいうのは難しいでしょう。
でも、自衛隊に触れないことぐらい、
人命に比べれば何でもないことではありませんか。

自衛隊の撤兵は、やはり、スペインのように、政権が変らなければ、
現実問題として、実現は不可能です。
今回の事件で、政府の本質が、権力のいやらしさが、よくわかりました。
みなさんもほんとうによく考えてみてください。

それから、もうひとつやりきれない事件がありました。

テレビなどで活躍している経済評論家で早大大学院教授の
植草一秀容疑者(43)が女子高生のスカートの中をのぞこうとしたとして、
東京都迷惑防止条例違反の現行犯で警視庁高輪署に逮捕されたのです。

わたしは、コメンテータの植草教授が大好きでした。
歯切れよく、わかりやすい物言い、聡明な経済分析力。
それになによりも、大衆に好かれそうな、さわやかな印象でした。

竹中大蔵大臣の後は、植草さんだと噂されたこともありました。
わたしも、それもいいのではないかと思ったこともありました。

人間は、いくつもの人格を内に秘めているのは事実です。
それは、殺人を犯す自分から、ひとの身代わりになって犠牲になる自分まで、
極端から、極端に、すべての人格をゲロのように内包しているのが人間です。

しかし、ゲロは外に出さない限りは、栄養なのです。
胃の中に、ゲロがある限りは、命の糧となる
大切な栄養なのです。

植草さん、ゲロを外に出してはいけません。
外に出した途端、栄養は、とてつもなく醜いものに変身します。

植草さん、あなたは女子高生のスカートのなかから、
何を見つけようとしたのですか。
あなたを責める気はまったくありません。
ただ、とてつもなく哀しいのです。



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