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            日常の風景   NO.0098
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ヨーテボリで仰天

ノルウェーのオスロからデンマークのコペンハーゲンまで、国際特急列車で約7時間半。
コペンハーゲンは島だから、本来なら、途中フェリーに乗り換える必要があったのだが、
今から5年前に橋がかかり、とても便利になった。

列車はオスロを出で、しばらくして、スウェーデンに入る。
そして橋を越えてデンマークに入るのである。

旅の中ほどで、列車はスウェーデンのヨーテボリという駅に到着する。
ヨーテボリはスウェーデン第二の大きな都市だが、
ただ、通過するだけの町なので、まったく下調べなどはしてゆかなかった。

列車が、ヨーテボリにしばらく停車して、再び出発したとき、
わたしたちは思わず、座席から腰を浮かして仰天した。
列車が、オスロに向けて逆方向に走り出したのである。

コペンハーゲン行きと確かに表示されていたのだが、
きっとヨーテボリで乗り換える必要があったのだ。

後ろの席に、かわいいめがねをかけ、しきりに編み物をしている、上品な老女がいた。
「この列車は、コペンハーゲンに行きますか?」

あわてているわたしを上目遣いにじっと見て、
「ええ、行きますよ」と豊かな白髪の老女は落ち着いて答えた。
「でも、わたしたちはオスロから来たのです。来るときは確か、こちら向きに進んでいたはずです」
しきりに人差し指で、列車が走っていた方向を指差した。

あわてていたので、わたしの英語が誤解されたようである。
「あなたたちオスロに行きたいの?それなら乗り換えなくてはね」
老女もあわてたように、声のトーンが高くなった。

「いえいえ、そうじゃなくて、オスロから来たのです。でも、今は逆向きに走っています」
だんだん話がこんがらがってきた。

そうこうするうちに車掌が来た。
背が高く、制服のよく似合うハンサムな女性の車掌である。

「この列車はコペンハーゲンに行きますか?」
車掌が来たので、いきがかりの、老女は心底ほっとした顔をしていた。
「ええ、行きますよ。ちょっと切符を見せて御覧なさい」

わたしたちの切符を点検して、大きくうなずいたので、
まだ訳がわからなかったが、とりあえず安心した。

落ち着いてから、ヨーテボリのガイドブックと地図をあらためて点検してみたのである。
何でもないことだった。
ヨーテボリの線路はY字形の縦棒の終端にあたる駅だったのである。

いわば袋小路の駅である。
Yの左側にコペンハーゲンが、右側にオスロが、中心にヨーテボリがあり、
ヨーテボリ駅に到着した列車は、どの列車も必ず逆方向に走り出すのである。

結局、今回の北欧旅行で、この出来事が、いちばん印象的なエピソードだった。
トラベル イズ トラブル。
多少のトラブルは個人旅行には付き物。
トラブルそのものを楽しんでしまう余裕がないと、旅は続けられない。



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sceneryの風景

ためておいた夏休みを一気に消化して、9/16日から27日まで、北欧旅行に行ってきました。
フィンランドのヘルシンキから→ストックホルム→オスロ→ベルゲン→コペンハーゲンと
そのほとんどを列車だけで移動しました。

北欧の秋は侮れません。
もう、日本でいえば、初冬といえるほど寒かったです。
冷たい雨にも、何度も降られました。

でも、車窓からの北欧らしい風景は最高でした。
特にオスロからベルゲンの間はすばらしかったです。
川沿いに列車が走ります。
そして、点在する大小のみずうみ。

白樺越しに見る、大きなみずうみ。
みずうみの向こうには小高いから松の丘。
それらが、鏡のような湖面に映り、
太陽にひかりをはじき返して次々と変化してゆく様はメルヘンの世界です。

オスロからコペンハーゲンも田園風景が続きますが、
やはり、開拓された牧歌的な風景です。

祖先が苦労して山をひっかいて畑地や牧草地に開墾した跡がよくわかります。
牧草地には、馬、牛、羊などがのんびりと草を食んでいます。
牧草地の向こうは又、森が続いています。

広々とした畑は、茶、黄、緑などに色分けされた、
パッチワークのようなモザイク模様に見えます。

ときどき民家が顔を見せるのです。
赤い屋根に白い壁、マッチ箱のようなシンプルな箱の上に、切妻の屋根がのっているだけ。
切妻の屋根には、レンガ造りの四角い煙突があります。
子供の頃、絵本で見たような家にそっくりです。

基本的には田んぼのある日本の田園風景と共通点はありますが、
決定的に違うのは、村がないということでしょうか。

ぽつりぽつりと家があり、それぞれの家の周りは、いぐねのように大きな木が取り囲んでいます。
何となく、個人主義が発達し、独立心が旺盛という、
西洋人の地理的な背景が、風景から伝わってきます。

村社会の日本とは決定的に違います。
だから、北欧の福祉政策がうまくいっているからといって、
おなじシステムを日本に取り入れることは不可能ではないでしょうか。
やはり、日本は、日本の文化にあった政策を独自に工夫すべきでしょうね。

北欧旅行の写真を今整理しています。
写真のアップはもうすこしお待ちください。



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