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            日常の風景   NO.0118
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花影からの青空

桜並木が豪華に続いている。
花びらだけで、ぽってりと太っている感じがとてもいいと思った。

ピンクのぶどうの実をたわわに実らせているかのように、
枝に隙間なくいっぱいの花弁をつけ、重そうな感じが、
ふくよかで、豊穣な雰囲気をかもしだしているのである。

風もなく、朝の陽射しはあたたかく、やさしい。
ときおり、花びらが、ゆっくりとした弧を描き、
出勤途上の石畳の上に落ちてくる。

ふと、デカダンスということばが、あたまに浮かんだ。

若い頃は、装飾過多の文学、音楽、建築物などに触れると、
「一種のデカダンスやねぇ」などと知ったような口を利いたこともあるが、
この年になると、デカダンスも大いに楽しもうという気分になってきた。

特に桜は、爛熟期の、風もないのに、数枚の花びらが、
間隔をゆっくりとおいて、静かに枝を離れる風景が、
いちばん好きだと思うようになってきた。
間違いなくデカダンスの美だと思うのだが、最高の贅沢でもある。

舞い落ちた、桜の花びらが、グレーの石畳のうえに、
適度にばらまかれている。
その石畳に木漏れ日が、やさしい影をつくっていた。

木漏れ日まで歩を進めたとき、ふと上を見上げると、
桜の花びらに区切られた青空が、モザイクのように見える。
モザイクの断片は、いつも見ている、空の青さより、ずっと濃く見えた。

あれっと思い、桜の木陰から出ると、
いつもの白っぽい青空に戻った。

次の桜の下からであらためて、見上げてみると、
やはり、桜の花びらで区切られた空は、濃く青いのである。

空を小さく区切ってみれば、空が濃く見えるのかと、
自分の指を使って、いろいろとためしてみたが、
あまり関係はなかった。
多分、桃色の桜の色が関係しているのだと思う。

それにしても、日蝕でもないのに、歩道に立ち止まり、
朝から、空に両手をかざして、もごもごと動かしている格好は、
他の人から見れば、奇妙な姿だったと思う。
多分、何か新興宗教の信者とでも映ったことだろう。



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sceneryの風景

満開の桜越しに見る青空は濃い。
これはあの朝だけの特異な現象なのか、
いちどみなさんも機会があれば確認してみてください。

空の色も太陽に向かっているときの色と、
太陽に背を向けているときにの色とは全然違う色に見えるのです。



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