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　　　　　　　　　　　　日常の風景　　　NO.0107
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家族忘年会

かしこづかれるようにして、荷物がさっと運ばれていった。
華やかな柄の着物を着た旅館の若い女性は、
「おくるまのキーも」と手をだした。

「いえ、こんなものぐらい軽いので自分で持ちます」
と、思わずいいかけたが、さすがにちょっと変だぞと、言葉を飲み込んだ。
慣れない、過剰なサービスに戸惑っているのである。

自由にくるまを移動させたいからキーを預からせて欲しいという意味だった。
キーを渡すと代わりに預り証と書いた紙切れをくれた。

広々としたロビーには、薄紫の厚手のカーペットが敷きつめられ、
ふんわりとした大型のソファがあちこちに置かれていた。

ここは北陸、山代温泉のＹ家という老舗で超一流だった有名観光旅館である。
「だった」という過去形になっているのは、
今はパンフレットを見て、ここに決めようと、気楽に指差せるぐらいの、
庶民的な価格になっているという意味である。

与えられた部屋は１０階だったが、いちど４階でエレベータを乗り換える必要があった。
赤いじゅうたんを敷いた４階の廊下を移動する途中に大浴場があった。
大浴場前の広場では、朝市が開かれるらしい。
朝市と墨でかかれた大きな看板が目についた。

家族総勢、大人５人と乳飲み子ひとり。
いろいろと、ふところ関係の都合で、
一部屋でいいと申し込んでおいた部屋の大きさも、申し分なかった。

１２畳の和室と、ソファが置いてある応接間のような部屋があり、
６畳の和室がその向こうにまだ続いていた。
部屋に備え付けてある案内書で１０階の見取り図を調べてみると、
多分この部屋が１０階ではいちばんいい部屋なのかもしれない。

部屋に案内してくれた、係員である若い女性が、お茶を入れ、お菓子を勧めてくれた。
係員の説明によると、大浴場以外に、１２階の屋上には、立派な露天風呂があるらしい。

一段落したので、大浴場に行くつもりで、ゆかたに着替え、
部屋からの景色も見ようと、何気なく、障子戸をがらりと開けたときである。
真っ先に目に入ったのが、目の前の手すりのさび。
塗装が剥げて、赤茶けたさびがむき出しになっている。

この部屋は、旅館の正面ではなく、裏手にあたっているらしい。
下を見ると、古ぼけたごみの搬送車が止まっていた。
旅館の玄関ロビーはあんなに明るくて華やかだったのに、
建物の裏手は、建物全体がひび割れて、薄汚れていた。

中途半端にごまかすのではなく、ここまで裏表がはっきりしていると、
それはそれで天晴れという気がしてきた。

昔の老舗大旅館もやはり経営は楽ではなさそうである。
支払う値段を考えれば、文句をいうべき筋合いのものではない。
従業員の教育はゆきとどいているし、すくなくとも目につくところは、
きちんと整備されているのである。

老舗大旅館がんばれ。
そして、儲かれば、やっぱり裏手もなおしてね。
１００人は入れそうな大浴場の湯船で、のんびりとからだを伸ばしながら、
わたしは心の中で、旅館に熱烈なエールを送っていた。



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ｓｃｅｎｅｒｙの風景

家族の忘年会を近場の温泉で過ごす。
まだ、今年で２度目なのですが、
できれば、毎年続けたい。
毎年の行事にしたいと密かに思っています。

もちろん、すべての費用は親の負担なのです。
お互いのスケジュールをすり合わせるのが、
それなりに大変で、お願いして、費用も出してという、
まあ、損な役回りです・・・



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