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            日常の風景   NO.0111
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京橋の夕暮れ

一日の仕事を終え、暮れなずむ彦根の町の明かりを、
左右に眺めながら、京橋のたもとに佇むひとときが好きである。

そこからは、ライトアップされた彦根城がくっきりと見えるし、
京橋のらんかんや、葱坊主のようなぎぼしも、
コンクリートでの復元というアラが粗方隠されて、
まるで、江戸時代の木製の橋のように見える。

京橋というのは、中堀と内堀とをつなぐ橋で、
橋を渡ると、その両側には、精巧に加工された石垣が、隙間なく並び、
優美で安定性のある曲線を見せている。

巨大な門のように見える、石垣の左右に、
背の高い立派な街灯が設置されている。
街灯のポールの先端には、腕のように伸びた支柱があり、
支柱の先に、真っ四角の白いあんどんのような街灯がぶらさがっている。

夕暮れになると、街灯にオレンジ色の明かりが灯り、
あんどんのなかのラクビーボールのような電球が、
京橋、石垣、お堀を明るく照らしだす。

わたしは、京橋のほとりに佇み、
昔、この橋を行き来した人たちのことをとりとめもなく想像している。
夕暮れの京橋には、そのようなふしぎな雰囲気がただようのだ。

わたしは、勤め人だから、想像するのは、
江戸時代の、勤め人としての武士の生活。

家老のような上級武士は、内堀のまわりに住居が構えられていたが、
お城の、勘定方に詰めているような平の侍の住居は、
外堀の向こう側にあった。
現在、外堀は完全に埋められて、昭和新道という道路になっている。

だから、この京橋は、お城への勤め人のメインロードなのである。
夕暮れになると、今よりはずっと多くの人が、
一日の勤めを終え、ほっとしながら、この橋を渡ったに違いない。

腰の刀が、きっと重かったのだろうと想像する。
生涯抜くこともない刀を、腰に差さずに済ますことができれば、
どんなにせいせいするかと、内心では思っていた武士もいたのではないだろうか。

家に帰れば、奥方が、玄関まで迎えに来て、
腰のものをうやうやしく頂くようなシーンが、時代劇ではよく見られるが、
あんなことは、新婚時代の、一時期だけのことだろうと思う。

子持ちの、平の侍は、お迎えもなく、一人でわびしく玄関をくぐり、
腰の物は、自分で刀立てに収めた。
現代のわたしの目から見れば、そんな想像を巡らすのである。

それでも、重いものを置いて開放されるという、
ほっとするような気分は、サラリーマンが、カバンを家に置くよりは、
ずっとすがすがしいものがあったような気がする。

何の変哲もない、四角い箱の街灯だが、
そのオレンジ色の光が、お堀に落ちると、
箱の光は縦長に引き伸ばされ、丸みを帯びる。

お堀のさざなみが、オレンジ色の光に、細かなしわを、
規則正しく刻み、それはまるで、江戸時代のちょうちんのよう映る。
夕暮れの一瞬、京橋には、想像力をかきたてるふしぎな雰囲気がただよう。



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sceneryの風景

「ダイナスティア」というオンライン上の無料のゲームがある。
オンライン上で、仮想の町が、いくつか構成されており、
そこの住民になると、ひとりのキャラクターと、部屋がそれぞれに与えられ、
そこから町に繰り出してゆくのである。
ゲームには、いままでのような戦闘とか、敵を倒すとか、宝を探すといかの目的はない。
目的も、終わりもないゲームなのです。

主に、若い女性向けの町であるが、
別に、おじさん絶対にお断りとも書いていなかったので、
ためしに、住民登録をしてみた。

町に出ると、通りには人がたくさん出ていて、
気が向けば、話しかけることもできるし、質問にも答えてくれる。

お店もたくさんあるが、この町には、お金というものがない。
花屋さんで、美しいバラが欲しければ、代金の代わりに、
お店のために、お祈りをするだけである。

うーん、ある種のユートピアですね。

知らない人同士、すぐに話しかけられるし、友達になれます。
それに、町の住民はみんな親切です。
この間なんか、町の中で迷ってしまい、どうして帰ればいいのかわからなくなったので、
道行く人に聞けば、親切にも、「後をついて来て下さい」といって、
家まで送り届けてくれました。

ネットの世界にだけ、このような人間らしい、やさしい世界がある。
どのように考えればいいのでしょう。
今は、まったくコメントできません。

暇なときに、また、この町を歩いて、気がついたことがあれば、報告します。

この町に、興味のある方は、
以下にURLにアクセスしてみてください。

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