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            日常の風景   NO.0119
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謎の花火大会

派手な打ち上げ花火の音に振り向くと、
テレビから、華やかな色彩の花火が、
夜空に次々と打ち上げられる様子が写しだされていた。

そのニュースのタイトルが「謎の花火大会」という、
興味をそそられるものであった。

わたしがこれから見物に行こうとしている花火大会のことらしい。
そういえば、この季節はずれの花火大会、
ポスターなどはあまり見かけたことがない。

4月18日〜22日まで、滋賀県大津市で、
第8回国際花火シンポジウムが開催された。
世界各国から、花火の関係者が集まり、
花火の最新技術、安全性、芸術性、法令関係などが討議されるらしい。

テレビから、日本の関係者のインタビューが映し出されていた。
「ほんまは、誰にも知らさんと、仲間内だけでやりたいんですわ」
「しやけど、花火だけは、これ、内緒ちゅうわけにいきまへんがな」
小太りで、作業着姿のおっちゃんが、こてこての関西弁で答えていた。

行政の観光課にもインタビューが行われた。
「これだけの行事、なぜ、もっと宣伝されないのですか?」
「いや、警備などの予算がとってないし、あまり人が集まりすぎても・・」
こちらの方は歯切れがあまりよくない。

とにかく、シンポジュームの5日間、琵琶湖畔の6箇所で、
毎日3000発の世界の花火が打ちあがったのである。

わが地元の彦根市には、イタリアと中国の花火が打ち上げられた。
4月ではあるが、雲も、風もあまりなく、絶好の花火日和である。

桜の花吹雪をくぐり抜けて、会場へ到着する。
夏のびわこまつりの花火大会とは違って、
夜店もほとんど出店していないし、それほど混雑もしていない。
波打ち際の絶好のポジションに、居を構えた。

イタリアの花火は、色使いが日本とは若干異なる。
緑とか、紫とかめずらしい色もよく見かけたが、
基本的なコンセプトは日本とはそれほど変わらない。

ところが、中国の花火は、かなり違った。
いわゆる、菊花といわれる、オーソドックスなタイプが少ないのである。
夜空をキャンパスにして、絵画を描いてゆくような、
かなり総合的な花火芸術を意識してつくられている。

ど派手なフィナーレの後、世界の花火にすっかり満足して、
帰路につこうとすると、どこから人が湧いてきたかと思えるほど、
歩行者、自転車、バス、自家用車などで、道路は混雑の極みに達した。
やはり、警備予算が不足しているというのが、響いている。

別にあわてて帰る必要もないので、混雑をやり過ごすために、
観光船の乗り場で、時間をつぶすことにした。

花火見物の船が、ちょうど帰ってきて、桟橋に着いたところだった。
桟橋近くのベンチに、相棒とふたりで座りながら、
つぎつぎと乗客が降りてくる船をぼんやりと見ていた。

夜のベンチにふたりで座るなんて、ずいぶんと久しぶりのことである。
まるで、タイムスリップしたような、空間も異国にスリップしたような、
そんな不思議な感覚だった。

イタリアと中国の花火は、余韻がなんとなくエキゾチックだった。



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sceneryの風景

日常の風景でも何度か書いたが、わたしは花火が大好きである。
海外で花火を見る機会も何度かあった。

海外へは、年に1度、ごくたまに2度。
それが、今まで、3度も海外で花火を偶然に目にすることができた。

いちばん大規模だったのが、7月のパリ祭のときの花火だった。
日中は、軍事パレードで、交通規制があちこちであり、
空は戦闘機がひっきりなしに轟音を響かせ、
えらいときに観光旅行に来たと後悔していたのだが、
エッフェル塔を背景にした、夜の花火は忘れられない。

その他、シンガポールのセントーサ島。
カナダのバンクーバのブッチャードガーデンで見た。

何度見ても、花火はいいですね。
花火は人生そのものです。
虚空から一瞬生まれ、一瞬だけ輝き、そしてふたたび闇のなかへ。



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