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            日常の風景   NO.0126
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円(まる)の掛け軸

やっと午前中の仕事が終わった。昼食をとるために、
事務所から、廊下に出ると、よどんだ、なまぬるい空気が
べとべととからだにまとわりついてきて、不快だった。
かといって、必要以上に冷やされた、事務所の空気は、
凍えていて、これまた快適ではない。

暑いときなら、季節にふさわしく、どちらかというと、
うっすらと汗ばむぐらいの気温がわたしは好きだ。

事務所の空調の温度をわたしは標準の28度にしたいのだが、
さすがに遠慮して26度にセットする。
しかし、この温度が、いつの間にか、すぐに20度に下げられるのである。
寒くなると、目立たないように、わたしが26度に戻す。
一日に何度かこのバトルが繰り返される。

外に出ると、日本晴れである。
風がさわやかに、頬をなでる。
快晴とそよ風とで途端に気分がよくなった。

選挙という、けたたましい嬌声に満ちたお祭りが終わったばかりで、
その反動か、自動車の騒音はすこしも気にならず、
不思議なほどに静かに感じられる。

食堂に行く途中に、古物商を営んでいる店がある。
いつもその前を通っているのに、
今日に限ってふとショーウィンドーの展示物に目が留まった。
気分がいいと、気持ちに余裕ができるのだ。

古い掛け軸である。
ひとつの円(まる)だけが、筆で書いてある。
みごとな円である。
コンパスで計ったような円に見えるが、もちろん一筆で一気に書かれたものである。

円の真下で筆を起こし、同じ場所で筆が止めてあるのがわかる。
墨のかすれ具合から、書き上げた筆の速度までが、
見るものに伝わってくる。

作者は何を思って、この円を描いたのだろうか。
人の心のまるさか、人の和か。
それとも、宇宙の曼荼羅をこの円で表現したのかもしれない。

わたしは、歩道に立ち尽くして、その掛け軸に見とれていた。
ショーウィンドウが半透明の鏡になって、
道路の向こう側にある建物を映している。
道路を走るくるまが映る。歩道の街路樹が風にこまかく揺れている。
そしてわたしがいる。

掛け軸の円の中心に、わたしのネクタイの結び目がすっぽりと入っていた。
宇宙の鏡に向かって、
だらしくなく緩められたわたしのネクタイを、
姿勢を正して、きゅっと結び直した。



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sceneryの風景

今回の日常の風景、円(まる)の掛け軸に興味がある人は、
一応写真をアップして置きましたので、
下記のURLにアクセスしてみてください。

http://www.geocities.jp/scenery_jp/maru/maru.html

作者が誰か、わたしにはさっぱりわかりません。
もし、良寛とか一休が書いたものであれば、
きっと何百万円もする物なのでしょうね。

絵画も書も、美術館で見るのは好きなのですが、
家に飾って毎日見るというような気はしませんね。
わたしなら、たとえ、千円でも多分買いません。

話は変わりますが、今回の総選挙の結果には驚きましたね。
わたしは岡田さんの、あの生真面目さに好感が持てましたので、
自民党には投票しませんでしたが、
ここまで見事に負けると、呆気に取られて、
ぽかんとした気分です。

政治家としての小泉さんは、いろいろと評価が分かれますが、
こと、選挙に関しては、天才的な、名プロデューサーといえます。

9/14から13日間、すこし長い夏休みを取って、
ウィーン、プラハ、ブダペストを旅行する予定です。
ウィーンへは2度目ですが、東欧圏は初めてです。

ウィーンまで往復8万円で航空券が手に入りましたが、
マレーシア航空ですので、クアランプールに一度立ち寄らなければなりません。
直行便に比べれば、ずいぶんと時間がかかりますが、
なによりも、安さが最優先ですので、仕方がないのです。

旅行から帰ってくれば、多分、郵政民営化法案は通過しているのでしょうね。



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