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            日常の風景   NO.0121
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突然の嵐

3階にある職場の廊下を機嫌よく歩いていたら、
突然、横殴りの強風に襲われた。

廊下のひと隅が、職場の喫煙場所に指定されており、
タバコの煙よけにいつも開け放たれたままになっている窓ガラスから、
突風が吹き込んできたのだ。

午前中は完璧といえるほどの快晴だったのに、
いつの間にか、空は不吉なほどの分厚い雲におおわれている。

風に向かって窓から外を眺めると、
風のうなり声がひゅんひゅんひゅーとアップテンポの、
短いリズムを刻んで、嵐、特有の凄味をむき出しにしていた。

いつもは、羽根をぴっと広げたまま、悠然と大空を舞うトビも、
嵐のなか、せわしく羽根を羽ばたかせて、空を移動していた。
鳩、すずめ、カラスなどの鳥たちも、右に左に体をよろめかせるようにして、
あわててどこかに飛んでゆく。

無数の枯れ葉が、まるで竜巻にでもあったように、
空中を飛散している。

樹齢を重ねた、新緑の大きなくすの木が、
まるで踊り狂う鏡獅子のたてがみのように、
しなやかに激しくゆれている。

前に見える彦根城の木立も、山全体が、
稲穂のような軽さでうねっている。

しばらく、風のなかに立ち尽くしていたが、
あまりの強風にたまらず、おもわず窓ガラスを閉じた。
天気予報でも、こんな嵐は予想していなかったはずだ。

窓を閉じると、まわりが途端に静かになり、嵐の風景も一変した。

凄味のある風のうなりは、どこか遠くの潮騒のような、
か細く、哀しげに聞こえた。

空中を舞う枯葉も、その一枚一枚が落ち着いてよく見える。
長細い笹の葉が、どうした弾みか縦になったまま、
すべるように空中を移動しているのは、ユーモラスだった。

そんなときふと思ったのである。
人生においても、嵐の真っただ中にいるとき、
すっと閉めることのできるガラス戸があればどれほど便利だろうと。

外界の嵐という現象そのものに、すこしも変化はないのだけれど、
直接の強風をひたすらやりすごすガラス戸があればいいのにね。

1時間ほどしてから、再び廊下を歩くと、
厚い雲はもう消えて、青空がのぞき、
雲の切れ目から、見事な天使の架け橋が地上に伸びていた。



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sceneryの風景

「突然の突風に驚いた」何気なく、日常の風景を書き出したのだが、
「突」がふたつも並ぶのはちょっとおかしいと、
すぐに気がついて、書き直した。

でも、そういえば「突」というのはどういう意味なのだろうと、
ふと気になって漢字辞書を引いてみた。

昔なら、辞書を引くのは、おっくうで面倒な作業だったのだが、
今はパソコンの中に、百科事典、広辞苑、漢字辞典、英和、和英、
それに現代用語辞典まで入っているから、
その気になればすぐに引くことができる。

「突」は「凸」と同義語らしい。
平面から急につき出すことをいうのである。

「突」の字そのものは、
「穴(あな)+犬」で、穴の中から急に犬がとび出すさまを示すとあった。

なんのひねりもない解説だったが、素直に納得。

パソコンの辞書も便利すぎて、
ついつい深みにずるずると引き込まれ、
あれ、最初は何を調べていたのだろうと、
わけがわからなくなることもしばしば。



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