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　　　　　　　　　　　　日常の風景　　　NO.0167
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火事さわぎ

ピーピーピーとあえぐような電子音が、かなりの音響で部屋に鳴り響いた。
寝ぼけまなこのまま薄目を開いて、腕時計を見ると８時前。
また、失敗したと思った。
ホテルの部屋に備え付けられている、
アラームクロックが鳴っているのに違いないと思った。

旅を続けているなかで、いままでにも２、３回失敗を繰り返している。
前日の泊り客がセットしたアラームがそのままになっていたのである。
一度などは、真夜中に突然ラジオから音楽が鳴り出し、
右往左往したこともあった。

だが、今回はどうもそのケースではないようだ。
電子音が鳴り続けている上、ドアの外がざわついている。
ドアを開けると、ホテルの従業員や泊り客が廊下にに出ていた。
従業員のおばさんに、
「イズ　ディス　ファイアーアラーム？」
と聞くと「イエス」と大きく何度もうなずいた。

「とにかく早く下に降りて外に出てくれ」というので、
バジャマままパーカーをはおり、あわてて外に出ようとすると、
「部屋のカギは持ったの？」「ドアもロックしておいて」
と後ろから妙に冷静な相棒の声。

どたどたと５階から階段を駆け降り、外に出ると、
夏とはいえ、ニュージーランドの朝は寒い。
襟を掻き合わせるようにして、まわりを見渡せば、
パジャマ姿の泊り客はわたしたちだけである。

ホテルの前には、２台の大きな消防車が到着していて、
ものものしく緊迫した雰囲気。

体格のいい髭をはやした消防士が、酸素ボンベを背中に背負い、
ぐるぐる巻きにしたホースを右手にかかえ、
勇躍ホテルの中に入っていった。

しばらくして、消防士たちは、ロビーに戻ってきた。
従業員に「ゴー・バック・アゲイン」といっているのが聞こえた。
憮然とした、ちょっとがっかりした表情だった。

部屋に戻る途中、ロビーの奥にあるレストランの各テーブルに、
白いペーパー、その上に白い小皿、
両側にフォークとナイフがセッティングされているのが目についた。

まだ食べかけのテーブルもあった。
くしゃくしゃのナプキンがテーブルに放り出されている。
火事騒ぎで中断された日常だが、すぐに元に戻るだろう。
コーヒーとパンのいい匂いが漂ってきた。
わたしたちも急に空腹を意識した。

でも間違いでよかった。オークランドは今日も青空。
旅も残こすところあと２日である。いよいよラストステージ。
美術館に行って、バスのリンクに乗り、郊外にも足を伸ばそう。



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ｓｃｅｎｅｒｙの風景

外国のレストランで注文をするとき、
ステーキの焼き加減とか、ビールの種類を聞かれるのには慣れていた。

しかし、ニュージーランドでは、コーヒーを注文するのに苦労した。
飲むコーヒーの種類を細かく聞かれるのである。
日本の喫茶店で飲むようなホットコーヒーを説明するのだが、
レギュラーとかアメリカンではまったく通じない。

１０種類ぐらいあるコーヒーのメニューを見せられ、
これから選んでくれといわれる。
コーヒーのメニューのなかでエスプレッソぐらいは知っていたが、
味が濃すぎてわたしには合わない。

フラットホワイトとかロングブラックとか
意味がわからないコーヒーを、順番に注文する羽目になった。

苦くてたまらないコーヒーや、ミルクの泡の浮いたコーヒー。
チョコレートに近い味などいっぱい経験して、
やっとフィルターコーヒーという表現を見つけたときは嬉しかった。

この表現はメニューには載っていなかったのでわからなかったのである。
またこのフィルターコーヒーが一番安くて、一番わたしの口に合った。



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