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            日常の風景   NO.0180
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日本一の露天風呂

ちょっと贅沢だとは思ったが、玉造温泉の老舗旅館「長楽園」に宿泊した。
露天風呂の脱衣場の正面は、湯船を挟んで、戦国時代の山城のようなごつごつとした石垣があった。
石垣の上は、露天風呂に続く日本庭園の木々がうっそうと茂っている。

湯船の広さはなんと120坪もある。
なるほど、これがパンフレットに日本一の露天風呂とうたわれていた風呂かと思った。
石垣を這うようにつたい、首を持ち上げた立派な龍の口から、72℃の源泉が、
惜しげもなく湯煙をたてながら湯船に流れ落ちている。

湯にからだを滑り込ませる。
熱い。かなり熱い。けれども気持ちがよい。
湯船は案外素朴なつくりである。足の裏がざらつく。
タイルなどは使っていない。ひよっとすればセメントをただ流し込んだだけなのかもしれない。

石垣の左側も同じような石垣が続いているが、右側は離れのような家が建っている。
湯船に面して、すぐのところに障子があって、ガラス戸があるのだが、
人の気配はない。たぶん昔の湯治場のなごりのような気がする。
余分な飾り気がまったくないのが、温泉のいい雰囲気を演出している。

夕食前のひと風呂。
温泉で遊ぶ、日本人だけが味わえる特権的な楽しみのひとつに違いない。

名物になっている露天風呂は旅館にひとつしかない。
ということは、混浴なのである。もちろん脱衣場は別々である。
わたしが湯船に浸かったとき、2、3人の先客はいたが男ばかりだった。

やがて、女湯の湯船に連絡している細い通路からひとりの女性が姿を見せた。
まるで大奥の奥女中が殿中を歩いているように、そろそろそろそろと歩いてくる。
よく見れば、うちの相棒だった。
旅館が用意しているプリント柄の明るい布で、からだをぐるぐる巻きにしているので、
露出度はまったくない。市民プールよりまだない。

相棒に続いて、あとふたりの女性と子供たちが続いた。
露天風呂に活気がでてきた。
しばらくは人の行き来は流動的だったが、そのうちファミリーでひとかたまりになる。

なにしろ120坪もある露天風呂である。
それぞれのファミリーが適度な距離を空けているので、家族風呂のようにくつろげる。

男も女も子供も裸のままでくつろいでいる。
いい景色である。
それにしても、相棒さんといっしょにお風呂に入ったのは、何十年ぶりのことだろう。



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sceneryの風景

今回の旅、玉造温泉、松江、石見銀山、出雲の写真です。
また、見てください。

http://www.geocities.jp/scenery_jp2/shimane/shimane.html

相棒さんの突然の腰痛で、一度はキャンセルにした旅でしたが、
すこし回復してくると、めげることなくまた計画を立て直しました。
青春18切符が使えるときに旅をしないと、なぜか損をしたような気もするのです。

彦根から玉造温泉まで、鈍行でゆられて約10時間かかりますが、
普通運賃だけでも普段なら7000円もかかるところが2300円で行けるのです。
庶民用の力強い切符です。

宿泊する旅館は1泊2食で1万円以下と決めているのですが、
上記に書いた「長楽園」のようなところは多少ルールを変更します。
旅館の建物、もしくは旅館の設備そのものが観光の対象の場合です。
このようなケースの場合だけ、もうすこし財布のひもを緩めるようにしています。

松江は落ち着いた、趣のある素敵な街でした。
小泉八雲が心酔した気分が多少わかりました。
もちろん、当時と今とではぜんぜん違うのでしょうが、まだ雰囲気は残っています。

石見銀山は、この間世界文化遺産に登録されたばかりです。
個人旅行の交通網はまだ、ぜんぜん整備されていません。
特急が止まる大田駅からでも、バスは1時間に1本走ればいいほうです。

わたしたちは、他の観光客とシェアーしてタクシーで現地に行きました。
でも現地は観光に燃えていて、気分よく観光ができました。
江戸時代の雰囲気もまだ残っています。
これ以上人が押し寄せ、通俗化しないように祈ります。



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