*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*
            日常の風景   NO.0179
*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*

そうめん流し

真っ青なみずみずしい青の外側に、薄いクリーム色の内側。
ぱかんと真ん中でふたつに断ち割られた青竹はみごとなものだった。
太い孟宗竹の直径は15センチはある。長さも5メートルを越えている。

「どこから、こんなみごとな竹を」
とわたしはスタッフのひとりにきいた。
「いや、買ってきたんですよ」
「いったい、いくらぐらいするものなのですか?」
わたしも典型的な関西人である。すぐに値段が気になる。
「5000円」
「へぇー、案外するものなのですね」
「加工賃も含めてね。割ったり、節を抜いたり、面取りをしたり、それら全部で5000円」
わたしには、この竹が安いのか高いのか見当もつかない。

ボランティアスタッフとして手伝っている、近所の託老所「たちばな」のそうめん流しの日である。
このみごとな竹はそうめん流しに使われる。
老人のためという理由はあるが、スタッフもその季節感を楽しんでいるように見える。

誕生会は毎月開かれるし、お花見、節句、七夕、そうめん流し、夏祭りなど、
季節に彩りや、アクセントをつけることに「たちばな」のスタッフは熱心である。
毎年の行事として、何度もこなしてきたのだろう、みんな手馴れている。

半分に割られた竹を2本、折りたたみ式の長机の上に運び込み、傾斜をつけてセットする。
長い竹の先は、アルミサッシの窓を越えて、庭に突き出ている。
竹に流す水は水道の水であるが、細い竹の筒先から水が出てくるような仕掛けも、
器用なスタッフのだれかが作って準備してある。

みんなに、そうめんツユ、ねぎ、しょうが、海苔などがまわされ、そうめん流しのスタートである。
わたしは、庭に出て、落ちてくるそうめんの回収かがりになった。
途中で掬いきれなかったそうめんを、ざるで受けて、それらを上流に戻して再び流すのである。

そうめん流しは、掬うタイミング割合に難しい。
竹筒に、お箸が次々と突き出されるにもかかわらず、落ち鮎ならぬ、落ちそうめんも多いのである。
気を利かした流し役のスタッフが、そうめんの量を増やすと、
今度は、そうめんが竹の節につかえて、ダムのように水を堰き止めてしまう。

水量のコントロールは、自在にはできないので、水が長机のボタボタとあふれ落ちてきて
大騒ぎになった失敗もあったが、こんなときは失敗も座がはなやかになる。
そういえば、わたしは写真係りも頼まれていたのだ。
あわてて、デジカメをつかみ、ぱちぱちと闇雲にシャツターを押した。

結局、スタッフにはそうめん流しの風流を楽しむ余裕はない。
残った落ちそうめんのざるから、立ったままつるつるとそうめんを味わったのであるが、
わたしは最近、こんなにもおいしいそうめんを食べたことがない。



----------------------------------------------------------------------
sceneryの風景

青春18切符を使って、8泊9日の長期旅行の予定でした。
準備万端、いよいよ出発する前日になって、ハプニングが起こりました。
相棒さんが、旅のパッキングの準備をしているときに、突如ギックリ腰になってしまったのです。

かなり重症だったようで、現在でもまだすっきりとはしていません。
当日はキャンセルの連絡にたいへんでしたが、
現役ではなかったという、最大の利点に今回気がつきました。

外国旅行を別にすれば、突然のハプニングでも失うものはほとんどないという事です。
旅行の代わりに、いつもの日常があるという感じでした。
現役なら、苦労して休暇をとったのにと、なかなか立ち直れなかったと思います。

これに懲りることなく、せめて、松江、出雲、石見銀山ぐらいにはでかけたいと、
現在計画を再度立て直している最中です。



----------------------------------------------------------------------
発行者 scenery
north@arion.ocn.ne.jp
HP 日常の風景
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/

----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、

『めろんぱん』 (マガジンID: 2179) http://www.melonpan.net/
『メルマ』  (マガジンID: 50779) http://www.melma.com/
『まぐまぐ』 (マガジンID: 79888)   http://www.mag2.com/
『メルマガ天国』 (マガジンID: 8289)   http://melten.com/
『E-Magazine』 (マガジンID: scenery1) http://melten.com/
『カプライト』 (マガジンID: 4327) http://kapu.biglobe.ne.jp/

を利用して発行しています。

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンの退会・解除は
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/  からお願いします
----------------------------------------------------------------------