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　　　　　　　　　　　　日常の風景　　　NO.0192
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座られますか？

定期的に繰り返してきた楽しみとはいえ、仕事でもないのに、
押し詰まった１２月２９日の土曜日に大阪に行くのはかなり気が引けた。

相棒の様子をうかがいながら、それとなく切り出してみると、
お正月のおでんと松前漬けをわたしが作るという、比較的負担の軽い交換条件だけで、
案外すんなりと了承が得られた。

慌しく、忙しそうな世間を横目に、相変わらずわたしはマイペースである。
みんなが同じことを一斉にするということに対しての、無意識の反発もある。
職場にいるときもそうだった。
同僚にはいつも「悠々としてるね」「余裕やねぇ」と褒められるのではなく、皮肉られていた。
元々緊迫するような雰囲気は大嫌いなのである。

だが、帰りの大阪駅では、悠々とはしていられなかった。
今年最後という気の緩みもあり、なじみの飲み屋で時間を使いすぎてしまったのである。
駅の階段を２段跳びに駆け上がり、やっと間に合った発車寸前の先頭車両。
肩で息をしながらも、わたしもまだまだ若いと、ちょっと自己満足。

車両は満員で、かなり混雑していた。
先頭車両の先頭席は老人優先席。
１０代の終わりから２０代始めぐらいの若い４人の娘が占有していた。
別に違和感もないし、ふしぎにも感じないのが、文化的にはちょっとさみしい風景ではある。

さりげなさを装った、実は、何時間も美容院で念入りに手入れされたような４つの髪型の後ろには、
上がグリーンで、下が白い枕カバーがある。
上のグリーンには、老人、妊婦、障害者、子供の手をつなぐ母親のイラストがあり、
かなり目立つ。シンボルとしての役割は立派に果たしている。

息切れがようやく収まったころ、通路側に座っている女性が、わたしに何かをいった。
車内のざわめきでよく聞き取れなかったので「えっ」と耳を女性のほうに近づけると
「座れられますか？」といっている。

一瞬、迷い、丁寧に断ろうとも思ったが、
座席に座っている残り３人のしらけたような表情を一瞬見て取り、気が変わった。
「ありがとう」と礼をいって、席を換わってもらった。
同じような年頃に見えたので、一組のグループだと勝手に決めつけていたのだが、
どうもそうではなかったようである。

いままで、席を立って老人に換わったことは何度かあったが、
席を換わってもらったことは、生涯において最初の経験だったので、複雑な心境だった。

席を換わってくれた彼女、次の新大阪駅で降りるのではないかと、
期待しつつそれとなく見ていたのだが、新大阪駅では降りなかった。
純粋に、老人のわたしのために席を換わってくれたのだ。

わたしは、これからもこのような状況をすべて素直に受け入れていこうと思う。
やさしいお嬢さん、どうもありがとう。
「今の若者は」というような、十把一絡げの、第一印象もあやまります。



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ｓｃｅｎｅｒｙの風景

あけまして、おめでとうございます。
みなさまどのような新年をお迎えなのでしょうか？
「日常の風景」本年もマイペースで書き進めてゆきますので、
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

みんなが一斉に同じことをするというのが、昔から大嫌いだった。
現役で仕事をしていたときも、朝の体操とか、一斉唱和などはその最たるものだった。
だから、体操のときはわざとテンポを自分だけ遅らしてみたり、
一斉唱和の時間は、口パクだけでごまかしてみたりで、
ささやかな抵抗を試みていたのである。

年末の大掃除なども、昔から疑問に感じていた。
大掃除にはおよそふさわしくない時期だからである。
だから我が家では、大掃除は気が向けば春から初夏の暖かな日を選んでする。
お正月は、見かけがそれなりに整っていればＯＫという我が家流を貫いている。



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