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            日常の風景   NO.0202
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「日常の風景」出版記念会

「日常の風景」が具体的な本になった。
メールマガジンの200号にあわせて出版するつもりだったが、
発行が2週間ほど遅れた。が、こんなことはたいした問題ではない。

出来上がった本は、わたしが期待していた以上のすばらしい仕上がりである。
本の出版を担当してくれた鹿児島のT氏は、わたしの古くからの文学仲間で、
採算を度外視して、いい本を作ることに熱意を傾けてくれたに違いない。

4月30日に大量の本が届き、明くる5月1日は木曜日。
相棒を同伴して、なじみの店に飲みに行く日であった。
店には本なしの生活は考えられないというNさんがいる。
そのNさんとほろ酔い加減で、小説の話をするのも至福のときである。

Nさんには、本が完成すれば、贈呈するという約束をしていた。
店のことを描いた「なじみの店」という作品も採択してあったので、
主人と女将さんにも贈呈するつもりはしていた。

しかし、毎木曜日に親しく話すお客さんはその他にもたくさんいるので、
結局8冊の贈呈本を携えて店に行くことになった。
封筒に個人名でラベルを貼り、手紙も添えたので、かなりの作業だったが、
結論からいえば、8冊持って行って正解だった。

その日店に来ていた6人のお客さんには、漏れなく手渡すことができたのである。
こんな状況で、万一ひとりにでも漏れがあれば、
いくら、後から渡すといって取り繕っても、気分をかなり害されるのは間違いない。
残りの2冊は、女将さんに預かってもらった。

封をしたまま、家に持ち帰ってくれればいいのに、
その場で開封して、ビールを飲み、刺身をつまみながら、
店のカウンターの上で本を開けられたのは、正直ちょっと面映ゆかった。

ひとりでも多くの人に読んで欲しいと思って本にしたのであるが、
自分の本が作者の目の前で読まれるのは、身の置き所に困るものである。
しかも、ものも言わずに、本に熱中されると、
何を読んでいるのだろうということも気になるし、
嬉しいような、恥ずかしいような、誇らしいような、不思議な感覚になる。

「出版記念会をぜひやろうや」なんて景気のいい話もでたが、
酔っぱらいのその場限りの話だけで、具体化することはまずないと思う。
それに、出版記念会といっても、作者と本を前にしての飲み会である。

その日の主役は間違いなくわたしだったし、
出版した本も目の前に並んでいたし、話題もわたしの本が中心だった。
とすれば、5月1日の木曜日が間違いなくわたしの出版記念会だった。



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sceneryの風景

自分の本を出版するということは、長い間迷走していたわたしの夢である。
迷走という意味は、人生におけるそれぞれのステージで、
出版に対する考え方が、変化し続けたからである。

人の性格というものは、基本的な部分は、それほど変わらないかもしれないが、
考え方は、環境とか経験に応じて、実にめまぐるしく変わるものである。
また変わらなくてはいけないのではないかとも思う。

若いときは、ぜひ自分の本を出版したいと考えていた。
しかも、出版社の企画で自分の本が世に出たらなあと夢のようなことを考えていた。
この世に生を受けた明確な証拠のようなものを残したいと思っていたのである。

文学をやり始めたころは、怖いもの知らずだった。
好きな作家の作品を読んでいても、
これぐらいの内容だったらわたしにも書けるような気がしていた。

しかし、文学の怖いところは、読めば読むほど、勉強すればするほど、
プロの作家のようには書けないということが見えてくるのである。
自分にはそれほどの才能はないという事実が客観視できるようになってくる。

身体を壊して入院をしたり、手術を受けたりした人生の経験を通じて、
価値観が徐々に180度転換し始めた。
モノそのものに執着がなくなり、旅の思い出のような、
消えてなくなってしまうものにより価値を感じるようになった。
毎年、自分のまわりからモノを無くしてゆき、
この世に存在した痕跡さえも消滅させることが理想に思えた。

再び、1冊だけでも本を出版したいという考えに変わったのは、
文学仲間の声援に背中を押されたこともあるが、
孫という特別な存在を目にしてからである。

孫のために祖父の存在を具体的な形にして残したかったというのが、
「日常の風景」を出版したきわめて平凡な理由である。

今回の出版はいわば、家族に残す「たまて箱」のようなもので、
開けてもそれほどのものはなにも出てこない白い煙のようだと自覚している。
本の最後に「日常の風景を読む」というタイトルで
作家の立石がコメントを寄せてくれた。彼は
「エッセイの全篇が淡い水彩画のようである」との印象を書いてくれた。

このコメントはわたしにとっては最高のほめ言葉である。なぜなら、
日常のきれいな上澄みだけをすくい取るように意識して書いてきたからである。

わたしにとっての出版は、本というたまて箱の
箱そのものが残したかったのかもしれない。

出版した「日常の風景」です。
http://www.geocities.jp/scenery_jp2/book/book.html

上記の文章は本の宣伝にはなっていませんよね。
格好のいいコピーを思いついても、
いつもの文章以外のものはなにもでてこないのは確かです。
しかし本は鹿児島のT編集者のおかげで、
作者が期待した以上の仕上がりになっているということは断言できます。

興味があって購入してやろうという読者は
north@arion.ocn.ne.jp まで、
「購入希望」と書いて送付先の住所と氏名を添えて連絡ください。
すぐに発送します。
料金は送料込みで2000円です。

後払いでOKです。
払いは銀行振り込みでもいいですし、その他切手、図書券での支払いでもOKです。



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発行者 scenery
north@arion.ocn.ne.jp
HP 日常の風景
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/

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日常の風景が本になりました。ご覧ください。
http://www.geocities.jp/scenery_jp2/book/book.html

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