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            日常の風景   NO.0208
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雷雨の花火大会

朝のテレビニュースで、淀川花火大会のことを知った。
毎年8月の土曜日に開催されるのだろう。
去年も大阪駅のプラットホームからしばらく見ていた記憶がある。

いつものように土曜日の大阪行きの準備をしていたら、
相棒が「折角だから見てきたら」といってくれた。

予想されるすさまじい人混みと混乱。
そんなマエナス要因を差し引いても、なんとなくその気になったのは、
地元で打ち上げられた、今年の彦根花火大会がいかにも貧弱で、
フラストレーションがかなり残っていたからだと思う。

梅田で軽い夕食を取り、阪急電車で十三に向かった。
華やかなゆかたを着た、若いカップルや、家族連れが多いなか、
熟年のおっさんが人混みのなかをひとりでぶらぶらと歩く。

十三の駅前近くのコンビニで、よく冷えたビールと、
つまみを購入してカバンに入れる。
花火を見上げながらの、冷たいビールは最高の相性になるはずだった。

ところが、人混みにもまれながら、打ち上げ会場を目指す途中で、
大音響の雷とともに、滝のような雨が降ってきたのである。

信じられないことに、あれほど混雑していた道路からは、
あっという間に人が消えた。
ビルの軒下や、マンションの入り口、夜店のテントにまで間借りする群衆。
「誰でもお入りください」と書いてあるキリスト教会の礼拝堂に飛び込む人。
「最悪や」という怨嗟の声が、呪詛のようにまわりに満ちる。

そうこうするうち、雨のなか最初の花火が始まった。
わたしはカバンから取り出した小さな傘を差し、淀川の河川敷を目指した。
あきらめて引き返す人、雨宿りを続ける人などがいて、
河川敷には、案外スムーズにたどりつけた。

朝早くから来て、一等場所を確保していた河川敷の多くの人は悲惨だった。
敷き詰めていたビニールシートはびしょ濡れになるし、
傘を差したわたしたちのような新参者が、狭い通路に立ち並ぶしで、
結局みんな、シートをあたまにかぶったりしての立ち見になった。

傘を差し掛けながら、ビールを飲み、つまみをかじるのは至難のわざだった。
花火は次々と大空で炸裂し、華やかな光と音のかたまりを夜空にまき散らしている。
この日を楽しみに努力をし、時間を使った人々には本当に気の毒な夜だった。

ついでに立ち寄ったわたしなどは、
何の努力もすることなく、むしろ理想的な場所が確保できたのかもしれない。
河川敷の人々は、全員が立ち見で、雨に濡れていた。
華やかな色彩のゆたかも、涼しげな模様のゆかたも濡れていた。

ふと、将来の日本、いや将来の世界を見たような気がしたのである。
みんながびしょ濡れで、みじめで、平等で。
平等というのは、このような恵まれない状態でのみ実現可能なのだろうか。



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sceneryの風景

今日がお盆で、明日が8/16日。
8/16日は実は楽しみにしていた日なのです。
「赤毛のアン」のふるさとカナダのプリンスエドワード島への旅を計画しています。

今年は「赤毛のアン」出版から100年ということで、
いろんなイベントが開催されているようです。
出かけるまでに、松本郁子訳の「赤毛のアン」を再度読み返しました。

この本はいわゆる少女小説ではありませんね。
還暦を過ぎた男が読んでも、多感な少女の感性に涙ぐむこともありました。

今年の夏は、異常な暑さが続き、ほとほとまいりましたから、
日本に帰ってくる頃には、猛暑が通りすぎていることを期待しています。
プリンスエドワード島は日本の10月頃の気候だそうです。

一足早く、秋を感じてきます。(向こうも猛暑だったりして・・・)
それまでみなさんお元気で。



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