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            日常の風景   NO.0204
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日常の落語世界

コンピュータとかオーディオの機器とかを除いて、
家具とか、台所用品などの商品を決めるのは相棒の役割である。
最近古いフライパンが焦げやすくなったので、あたらしいのを購入した。

相棒、台所の床に座り込んで、古いフライパンを量りにかけている。
数字を確かめようとするのだが、フライパンで目盛りが覆われてしまって、
デジタルの数字が確認できない。

そこでやおら、邪魔なフライパンを一端取り除いて、すぐに目盛りを見つめる。
ゼロに戻った目盛りをいつまでもじっと見ている。

しばらく、何事か考えていたが、フライパンを量りの中央部からずらし、
首を傾げ、斜めから数字を確認する方法を思いついた。
そして古いフライパンの重さをメモした。
同じように、あたらしく購入してきたフライパンの重さも量った。

次の瞬間、満面の笑みを浮かべて「70グラム」軽くなったと、
わたしに告げた。

わたしはこのときふと「宿替え」という落語を思い出した。
桂雀枝が演じているのが好きで、ときどきCDで聴いている。

内容をすこし説明すると、源さんと呼ばれる男が、引っ越しにあたって、
一反風呂敷にいっぱいの荷物を詰め込むのである。
やぐら炬燵、漬物石、ボテ箱、おまる、瓢箪、針刺し、竹とんぼ等。
そして案の定、重すぎで担ぎ上げられなくなる。
そして源さんが言うのである。
「ちょっと入れすぎた。いっぺん上の竹とんぼ取ってみてくれ」
「そんな軽いもん取ったかて、何の足しにもなれへんやないか?」
「そんなことあるかい、人間いうのは神経のもんや、早いこと取らんかい、
ええっ、もう取りました?あっ取ったんかいな、取ったんなら取ったと
言わんと、神経がわからへんやないか」

数値については、相棒よりもわたしの方が科学の信奉者である。
でも、日常生活においては、わたしよりも妙に科学的で分析的なところがある。

約900グラムあるフライパン。
そのなかで50グラムぐらいの前後なら、人間の感覚はいい加減なものだと思う。
その日の体調、気分、取っ手の感触、フライパンの材質、色、光沢などで
容易に重く感じたり、軽く感じたりしていまう。

相棒はわたしに、フライパンを購入したとき、
「前のより軽いのを見つけたわ」といって帰ってきたのである。
購入を決意したときには、確かに軽いと感じたのであろう。
でも、それを数字で確かめたい。
竹トンボを取り除いたと、はっきり神経に届けたい。

今回のことは相棒にとって非常にラッキーだったと思う。
自分の感覚と科学的な数字が一致したからである。
万一10グラムでもオーバーしていれば、後悔やら落胆やら悔恨やら猜疑やらが
一度に訪れて、毎日の料理にも影響が及んだかもしれない。



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sceneryの風景

秋葉原での、不条理な凄惨を極める事件。
社会の閉塞感を象徴するような、やり切れなさを覚えます。
大多数の楽天的な庶民の日常にも暗い影が徐々に忍び込んできています。

心和むような話題だけを選んで書きたいと思っている「日常の風景」も
そのうちに書くことがなくなるのではないかと多少心配しています。

地球の温暖化の問題をはじめ、原油高、最近では食糧問題が焦点になってきました。
いずれ、食料は問題になると思っていましたが、
こんなに早く、前兆がみられるとは考えてもいませんでした。

食糧問題が、前面に出てくると、地球環境なんていう将来の話は、
間違いなく吹き飛んでしまいます。
しかも又、食料問題が、解決される望みは地球環境問題以上に絶望的です。

世界人口の推移を調べてみました。
1800年 10億人
1900年 20億人
2000年 60億人
2050年 90億人〜120億人

産業革命以降100年かかって10億人増えた世界人口。
20世紀の100年で一気に40億人も増えました。
権威ある研究所で3000年の予測をしているところはありません。
予測が不可能なのです。食糧が足りなくなって、どこかで人口減になるのは間違いありません。
できれば、それほどの混乱もなく、国民みんなが乏しい食料を分け合って、
みんながすこしずつひもじくなるというソフトランディングができればいいのですが・・・



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