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            日常の風景   NO.0238
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秋晴れの朝

土曜日に、大阪の英会話喫茶に通うという習慣が
仕事のようにすっかり定着してしまった。

アメリカ、カナダ、オーストラリア、イングランドなど、
さまざまな国の外国人と話すのも刺激になるが、
テーブルを囲んでいる、日本人の本音が聞けるのも楽しみである。

高校生の若者から、引退してもう70歳を超えている人まで。
学生、専業主婦、公務員、弁護士、医師などバラエティ豊かな職業。
世代を超えて、真剣に話せる場所があるというのが、
わたしにはとても貴重に思える。

だが、英語で込み入った話ができる程の表現力がある訳ではない。
だから常にほんとうの話をしている訳ではないのだ。
ほんとうの話をしたいのだが、微妙な説明ができないのだ。

「ファット・シーズン・ドゥユー・ライク・ベスト?」
季節の話は、話題を変えたりするときに、よく問われる質問である。
わたしは、いつも春だと答えることにしている。

厳しい冬の寒さから解放され、桜の花が一斉に咲き、
花の下で、花見を楽しむ日本の春は、説明がしやすい。
みんなが納得してくれる。

でも、わたしが本当に好きなシーズンは秋である。
元々春よりも秋が好きだった訳ではない。
年を重ねて好みが、変化したのである。

秋晴れの朝は、一年で一番すがすがしい。
春に感じるぼよんとした、ぬくみに代えて、きりっとした冷気が、
気持に、ある種の気合いを入れてくれる。

大阪に行くために、お堀端の遊歩道を自転車で走っていると、
若々しい緑の輝きを失いつつある桜並木の間から、
太陽の反射をうけて、お堀の水が宝石のかけらようにキラめいている。

黄土色の遊歩道には、桜並木の濃い影が落ち、風で影が微妙に揺れている。
道に落ちた枯葉が、風に押されて、カサカサとした乾いた音を立てている。

わくら葉が、ときおり桜の枝を離れ、
名残惜しそうに、ゆっくりとお堀に落ちて行く。

お堀では、カモのつがいが並んで、水面を滑るように移動している。
水中では、カモの前を大きな鯉が悠然と横切った。
地上では、散歩に連れられた、中型の白い犬が飼い主を引っ張るようにして歩き、
空中では、名前も知らない小鳥が、やかましくさえずりながら、群れで飛んでいる。

みんな秋の気持ちのいい朝を楽しんでいるように見える。

自転車を降りて、遊歩道で赤く輝いているように見えた一枚の落葉を拾った。
太陽に透かして見る。
紅葉した完璧な葉っぱに見えたのに、拾ってみると欠陥だらけだ。

鮮やかな深紅もあるが、緑も黄色も茶色も不揃いなモザイクのようにみんなある。
大小、虫食いの穴もかなりあいている。

だが、桜に比べて紅葉には、一枚、いちまいの表情にそれぞれの味わいがある。

完全な葉っぱなんてどこにもないのだ。
疲れ、傷つき、それでいてまだ、人生に彩りを残したいと感じている。
紅葉は人生そのものかも知れない。



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sceneryの風景

民主党の滑り出しは、今のところ順調に見えます。
まだ具体的な政策は何もしていないからでしょうね。

具体的な政治というのは、本当に難しい仕事です。
「情」と「非情」とのバランス感覚に優れた、ごく一部の人が政治家に向いています。

わたしたち庶民は、情の部分にのみ焦点をあてて、政治を批判すればいいのですし、
庶民感情からすれば、確固たる正論でもあります。

高速道路の無料化だけをとらえても、いろんな意見が噴出します。
完全に無料化すれば、料金の徴収作業員や、影響を受ける関連産業を含めて、
約1万5千人の職場がなくなると聞いています。

フェリー業界も、成り立たなくなるでしょうし、
JRや私鉄への影響も甚大なものになります。

政治はトータルとして社会にプラスになるということを
具体化するという作業が、姿勢が、求められ続けられるものです。

最後には妥協を重ねたような「非情」の政治決断で決着するでしょう。

政治に今までの連続性を無視して、劇的な変革を求めれば、かならず失敗します。
高速道路無料化も、政治的な方向性を決めて、
5年ぐらいをかけてゆっくりと実施してゆくべき性質のものだと思います。

政治の理想は、民主主義ではありません。
民主主義は、他にいい方法がないので、やむを得ず選択している政治です。

地球温暖化の防止にしても、民主主義では、個々の欲望が優先して、
もう間に合わないのです。
現在のわたしたちの生活を犠牲にしてでも、将来の地球を子孫を守るというような理想は、
選挙にうつつを抜かしている民主主義では不可能です。

誰かが現在の状況を、タイタニック号の沈没になぞらえて、うまい比喩を言っていました。
人類が乗っている船は、氷山が目の前に迫っている状況では、もはやない。
もうすでに、氷山にぶつかっているのだ。

それにもかかわらず、豪華客船のホールでは、華麗なダンスが踊られている、と。



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