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            日常の風景   NO.0239
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蓋のはなし

リフォームの展示会場で見たときは、明らかに行き過ぎだと思った。
トイレの蓋の話である。
人の気配をセンサーで認識して、トップの蓋が自動的に開くのである。

もちろん、値段もそれなりに高くなるし、
贅沢だ、やりずぎだ、なまぐさになる、ものを考えなくなる等、
さんざんに批判したトイレが、我が家に設置された。

もう半年以上も前のことなので、詳しいいきさつはもう忘れた。
多分、色がこの色しかないとか、在庫品なので格安にするとか、
相棒との間でどのような話が交わされたのか、
価格の面で折り合いがついたのであろう。よくある話である。

しかし、トイレに入ると、忘れることなく
「いらっしゃい」「お待ちしておりました」とでも言うように、
トップの蓋をゆっくりと持ち上げて、歓迎のポーズを示されるのは、
意外に楽しくて、癒されるのである。

我が家で、先回りの気配りをして、忠実に意をくんでくれるのは、
お前だけだという気もするのである。

たまに、ご主人様が、狭い空間で本に夢中になり過ぎて、
その余韻で、水洗のボタンを押し忘れることがあったとしても、
後から相棒に叱られてはかわいそうだと、
黙々と気配りの水を流してくれる。

ひょっとすれば、介護ロボット、ペットロボットなども、
日本人の気質に、いや、わたしの個人の気質に
合っていそうな気もする。



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sceneryの風景

民主党が政権を取って、全国のダム事業の中止が次々と発表された。
今までのいきさつは、もちろんいろいろとあるのだろうが、
時代の流れとすれば、間違いなく正しい方向だと思われる。

ダムというのは、わたしたちが子供の頃は、夢の技術であった。
一度建設してしまえば、大きな川を自在にコントロールすることができ、
治水はもちろん、電力エネルギーも、永遠に取り出せる。
小学校で確かそのようなことを、習った記憶がある。

しかし、実態は、生命力のない淀んだ川にした。川を殺したのである。
ダム自体も、年々大量の堆積物で埋まって行く。
自然の営みを強引にせき止め、自らも埋まって行く消耗品だったのである。

石原裕次郎主演の「黒部の太陽」を拍手喝さいで迎えたわたしたち。
あの当時は、ダム造りは間違いなく時代のヒーローだった。

その黒部川を例に取ると、黒部川流域には10基の発電所があり、
その合計出力は89万キロワット。

黒部ダムの建設に要した時間は7年。
その費用は今のお金に換算して1兆4000億円。
延べ1000万人の労働者が従事し、建設途中の犠牲者は171人。

数字を見るだけで、ずいぶんと時代ががっていることがわかる。
もうダムの時代ではないことは確かである。

黒部川流域の10基の発電所の合計出力は89万キロワット。
今では小さな原子力発電所一基で100万キロワット。



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