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            日常の風景   NO.0223
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確実ないい加減

「確実にする」と「いい加減にする」とは相反することばのように思える。
ところが、こと家事に関する限り、
わたしの造語による「確実ないい加減さ」という姿勢が
たいせつな秘訣のように感じられる。

多分、本気になれば、家事仕事は男の方が要領がいいと思う。
サラリーマン生活で、決まり切ったルーチンをさばくのには慣れている。
仕事中は自分を一種のロボットとして動かせる工夫があり、向上心もある。

たとえば、自分が家事一切を引き受ける会社の社員だったとする。
どれだけ混乱した台所でもマニュアル通り、てきぱきと懸命にかたずけるに違いない。
仕事だから、当たり前のことで何と言うことはない。
カスタマーの台所が見違えるようになり、感謝されれば喜びさえ感じられるだろう。

ところが自分の家ではそうはいかない。
絶対にそうはいかない。できれば何んにもしたくないのである。
だから逆に定年後、週に2日間だけは家事一切を引き受けるということを、
わたしの方から、相棒に申し出たのである。

その2日間を仕事として、かたずけてしまえば、
後の5日間は、ほぼ自由に自分の時間が楽しめる。

2日間の家事当番であるが、2年も続けていると、
料理も洗濯も掃除も、最初の頃の半分の時間で済むようになった。
家事当番だと身構えなくても、決まった手順でルーチンが流れて行く。

たとえば掃除。かなりいい加減である。
居間、玄関、台所、トイレなどほんとうにざっと掃除機を走らせるだけだが、
ルーチンだから、掃除をしないという日はまずない。
週に2日は確実に掃除をすることがわかると、
今度は相棒の方が、手を抜くようになった。まあそれはそれでいい。

わたしは決して几帳面ではない。
どちらかといえばなまぐさな方である。
でも、まわりがかたずいて、きれいに整頓されているのは好きなのである。
典型的な「掃除嫌いのきれい好き」

机のまわりの整理整頓が几帳面にできないわたしの工夫は、
100円ショップで購入した透明のトレイ。
これを一つ置いておくだけで、劇的に机の雰囲気が変わる。
乱雑にぶちまけるのはすこしも変わらないのに、
トレイの枠のなかにあると、それが混乱には見えないのである。

食卓でも同じことをしている。
とにかく箱でも、おぼんでもなんでもいい。
枠のなかに収める。
見かけがきれいだと、落ち着く。

100パーセントの力を出して家事をしてはいけない。
いい加減に手抜きをして、むらのないように長く続ける。
仕事でも、結婚生活でも同じことがいえそうな気がするなぁ。



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sceneryの風景

最近、つれあいを亡くした友人がいる。
ひとり暮らしになった友人に、
「せめてたまには料理ぐらいしろよ。やってみれば案外面白いで」といった。

彼は、わたしがたまに料理をしていることを知っているので、
神妙な顔をして聞いていた。
しかし、これは話の流れで思わずついた真っ赤な嘘。

わたしは自分ひとりだと、料理も掃除も何もする気は起らない。
相棒は、わたしがいないときにも、自分ひとりのために料理をしている。

男の家事というのは、やはり自分のためではなく、相手があってのことなのである。
やはりつけ刃というか、理屈で考えたというか、
そのあたりが身にはついていない。嘘くさい。
自分のための家事ができる女性の生活力は、やはりすばらしいと思う。

わたしが、ボランティアをしている宅老所でも、
男性と女性とでは、同じひとり暮らしという環境であっても、
生きて行く力、生活力がまるで違う

自分ひとりのための家事がこなせてこそ、
はじめて生きるための家事と呼べるのではないだろうか?
男はいつも理屈で考えて、結局はトータルでは女性にかなわない。



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