*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*
            日常の風景   NO.0225
*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*

君の行く道は

仕方なく受け取ったパンフレットのキャッチコピーが気に入った。

2009年シニアライフフォーラム。
「君の行く道はどこへ?」
〜かって「若者たち」と呼ばれたあなたへ〜 

という見出しだった。

これはわたしたち夫婦に呼びかけているフォーラムだと思った。
「参加してみよか」と、隣を歩いている相棒にいうと
一瞬のためらいの後、仕方なくという風にうなずいた。

これが地元の彦根でのフォーラムなら、
相棒も諸手を挙げて賛成してくれたに違いない。
だが、ここは東京の台東区。
浅草で偶然遭遇した東京マラソンを見物した後、
ぶらぶらと歩いていた、いわば旅の途中での出来事である。

わたしのこころが強く動いたのには、コピーが気に入った以外に
もうひとつの理由があった。
朝から、歩きづめで足の筋肉がぱんぱんに張って痛くて、
どこかで休憩する必要を感じていたのである。
休憩を兼ねて、2時間ほど話を聞くのは時間的にもぴったしだった。

台東区の図書館3階にある会場には、
かつての若者たちが30名〜40名ぐらい集まっていた。
わたしたちと同年輩か、かなり年輩の人も多い。

パネラーは生きがい支援システム研究所の講師のほか
混声合唱団の団長、ボランティア団体の代表、台東区の保護司などである。
主催者側の狙いははっきりしている。
定年後の生活をいかに有意義に生きるか、そのことを語りたいのである。

だが、フォーラムは主催者の狙い通りには進まなかった。
70代とおぼしき、ひとり暮らしの女性が
最初は自分のボランティア活動について話していたのだが、
そのうち、ひとり暮らしの不安、そして介護の問題にまで話は及んだ。

切実な問題だけに、発言者が次々と立ち上がり、
パネラーまでもが、自分の家庭の内情を本音で披瀝してゆく。
講師の先生も、この間嫁いだ娘に、何かあったときは頼むと真剣に頭を下げたが、
「うーんと考え込むんですよね、これはショックでしたね」
と発言して会場からの複雑な笑いを誘っていた。
結局、なんとなく出た結論らしきものは、子供はあてにできないということだった。

参加しているボランティア団体や趣味のグループでの
人間関係の難しさも話題になった。
この問題はわたしも経験済みである。
田舎も都会もまったく同じ問題を抱え、同じように悩んでいる。

かつて中小企業の社長だった人が、命令できないつらさを語っていた。
グループを前向きに引っ張って行こうとすればするほど、
そのグループからうとまれてしまう過程が目に見えるようだった。
「みんなに意見を求めても、なにも出て来ない。
仕方なく、わたしが前に出ると誤解される」

長年グループをまとめてきたパネラーのコメントは、
リーダーは裏方に徹する、自分の意見はなるだけ言わない。という、
極めて日本的なものだった。

「おひとり様」と自分で名づけて、今からひとり暮らしの練習をしているという
前向きな女性の印象的な発言もあった。
旅や観劇、美術館など、意識的にひとりだけで出かけるのである。

主体的にひとりで行動するのは、孤独ではない。それは単独である。
孤独と単独とは違うのだという、講師のまとめも説得力があった。

隣の相棒は、みんなの意見にうなずきながら積極的にメモを走らせていた。
去年から「おひとり様旅行」にも自分で計画を立て、
ネットで宿も予約して、出かけている。
平均的に考えれば、わたしがいなくなってからの10年間。
ひとりになっても、なんとかけなげにがんばって生きて行ってくれるでしょう。



----------------------------------------------------------------------
sceneryの風景

母校が卒業式に招待してくれた。
幸いなことに青春18きっぷが使用できる期間である。
これを機会に、久しぶりの東京見物を計画した。

宿は水道橋のビジネスホテル。
水道橋というのは、山手線のちょうど中央に当たる場所で、
東京ドームがすぐ目の前という便利な場所。
ここを拠点に4泊5日の東京見物である。お上りさんに徹することにした。

東京は7年ぶりである。
今回は、変貌した東京を見る、有名だがまだ一度も行っていない場所をメインにした。
都庁、東京ミッドタウン、六本木ヒルズ、お台場、ディズニーシー。
靖国神社、皇居、泉岳寺、国会図書館、国会議事堂、柴又帝釈天、東大、巣鴨等々。

歩き続けた旅という印象でした。
行きあたりばったりでしたが、かなり充実したスケジュールになりました。

ちなみにこのフォーラムのあった日のスケジュールを紹介します。

3/22 東京グリーンホテル(水道橋)→ (徒歩)本郷通りから東大へ

   → 赤門 → 三四郎池 → 小柴記念館 → 上野不忍池 

   → 浅草へ(東京シティマラソン見学) → 仲見世通り → 浅草寺 

   → かっぱ橋道具街 → 池波正太郎記念館 → シニアライフフォーラム参加

   → 上野・国立西洋美術館 → 有楽町 → 銀座 

   → 歌舞伎座(一幕見席800円)大石内蔵助最後の一日



----------------------------------------------------------------------
発行者 scenery
north@arion.ocn.ne.jp
HP 日常の風景
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/

----------------------------------------------------------------------
日常の風景が本になりました。ご覧ください。
http://www.geocities.jp/scenery_jp2/book/book.html

----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、

『めろんぱん』 (マガジンID: 2179) http://www.melonpan.net/
『メルマ』  (マガジンID: 50779) http://www.melma.com/
『まぐまぐ』 (マガジンID: 79888)   http://www.mag2.com/
『E-Magazine』 (マガジンID: scenery1) http://melten.com/
『カプライト』 (マガジンID: 4327) http://kapu.biglobe.ne.jp/

を利用して発行しています。

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンの退会・解除は
http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/  からお願いします
----------------------------------------------------------------------