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            日常の風景   NO.0256
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趣味の録画

余裕がたいせつ、気分のゆとりを楽しむ。
無駄に見えることこそが、人間らしさの原点、文化そのものである。
なんて、理屈はよくわかっているし、こころからそう思っている。

でも、わたしの実際の生活の行動に関しては決定的な性癖がある。
時間の使い方に余裕がない。ゆったりしているようで、ゆったりとはしていない。
その一例がテレビの見方だと思う。

テレビを見るのは、好きな方である。
だが定時のNHKニュース以外はすべて録画でしか見ない。
録画だと、不必要な部分は早送りやスキップボタンでカットすることができるからである。

録画をするのは、若いときからの一種の道楽であった。
家のローンに追われ、家計が火の車だった子育て真っ只中のころ、
当時最新式だったビクターのVHSビデオレコーダを購入した。
確か26万円だったと思う。よくも相棒が認めてくれたことだと感謝している。

振り返れば、もう30年以上も前からわたしの録画人生は始まっていた。
「ルーブル美術館」とか「宇宙への旅」とか「人体の驚異」とか
NHK特集はほとんどビデオレコーダに記録した。

時代が流れて、レコーダがビデオからDVDやハードディスクへと変化した。
我が家に残されたのは200本を超える、かさ高いVHSビデオの山である。
再び膨大な時間をかけて、主なVHSビデオだけDVDにダビングして、すべて処分した。

ほとんどのビデオは一度も再生されることなく、我が家から消えたのである。
結果からみれば、時間とお金を無駄に浪費したわけであるが、
この無駄はあまり後悔していない。

録画をして自分流に編集をする事自体が趣味だと考えれば、
録画、編集する時間は十分に楽しかったし、充実していた。
だから再び見る時間はないとわかっていても、録画、編集は止められない。

最近ではこのように考えるようになった。
録画、編集するという趣味は、ダイヤモンド鉱山のオーナになることではないのかと。
膨大な記録のなかに、たまに自分だけのダイヤが眠っているのである。

ボランティアをしている宅老所では、わたしのこの録画、編集の趣味が役立っている。
DVDに編集した番組を、大画面のプロジェクタに再生してみんなで楽しむのである。

最近での最大のヒットは、人工衛星かぐやが撮影した、月から見た「地球の出」の映像。
漆黒の宇宙を背景に、月の地平線から、青い地球が白い雲をちりばめて昇ってくる姿を、
お年寄りが、感嘆の声をあげて、素直に感動してくれた。

わたし自身何度見ても感動的だし、何度見ても見飽きない。
この映像は、わたしのパソコンのディスクトップに入っていて、
いつでも見られるようになっている。

何かのトラブルを抱えたとき、この映像を見ると、気分が変わる。
わたしにとって精神安定剤のような作用がある。まさにダイヤの映像である。

肩の骨を骨折して、3カ月ほど入院したときは、
NHK特集で司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズがずいぶんとなぐさめになった。
膨大なシリーズで、録画編集にはかなりの時間がかかったのだが、
本格的に再生して楽しんだのは、入院した時が最初だった。
長い間埋もれていたが、この番組もわたしにとってのダイヤモンドだった。

多分これからも、宇宙の映像、最先端の科学、哲学、歴史、絵画、音楽、世界遺産など、
興味ある世界は、懲りずに録画して、そのほとんどは、
再び再生されることなく、そのまま消えてゆく運命にあるのだろう。



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sceneryの風景

日常の風景は2週間に一度のペースでずっと書き続けてきました。
でも、メモ帳を見ても、何も書いていないというときもよくあります。
何も起こらなかったわけはないのですから、感性と意欲の問題です。

読み返してみても、今週は面白いところが、ほとんどありませんね。
書くことがないから今週は休みにするよりも、
とにかく、ペースを何とか維持するということに主眼を置きたいと思います。

今週は書いた本人が面白くないことを自覚していますから、お許しください。

「ゲゲゲの女房」という朝ドラを相棒と楽しんでいる。もちろん録画である。
タイトルが始まると、無意識にリモコンのコントローラにある、
スキップボタンを2度、ダブルクリックのように押す。

1分間の映像をカットしても、まだタイトルは続いている。
朝ドラは1分間。「龍馬伝」などは2分30秒カットできる。
わたしはこの見方でいいと思うのだが、相棒はそれが気に入らない。

しかも「龍馬伝」はカットしてもいいが「ゲゲゲの女房」は
タイトルも見たいという。わたしにはその基準がさっぱりとわからないのである。

(気楽に書いていて今、気づいたのですが、相棒とのこのやりとりをメインにして
風景にまとめた方が良かったような気がしました)

宅老所用にとNHKの番組で「あの人に会いたい」という番組を撮り続けていた。
故人の生前の映像やトークを20分にまとめた番組である。
作家、画家、役者、映画監督、実業家、落語家などもう100人は超えている。

作家の映像だけでも、
三島由紀夫、川端康成、林芙美子、金子光晴、中島らも、山田風太郎、
寺島修司、志賀直哉、里見惇、黒岩重吾、今東光、宇野千代、丹羽文雄、石川達三、
横溝正史、菊田一夫、色川武大、三浦綾子、岡部伊都子、武者小路実篤、堀田善衛、
安部公房、白洲正子、司馬遼太郎、水上勉、住井すゑ、野上弥生子。

こうして羅列してみると、ちょっとしたコレクションですね。
お年寄りに喜んでもらおうと最初は藤山寛美とか
ミヤコ蝶々、柳家金語楼、三波晴夫、藤山一郎などを撮っていたのですが、
撮り続けているうちに、わたし自身のコレクションになりました。

いつでも、上記の作家の映像や話が聴けるわけですから、
入院のときなどには非常な支えになる予感があります。



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