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            日常の風景   NO.0268
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暗黒エネルギー

NHK教育テレビのサイエンスゼロはわたしのお気に入りの番組である。
現在の最先端を走る科学研究をわかりやすい形にして見せてくれる。
そのなかでも、わたしは特に宇宙科学の話にとても魅かれる。

この間も暗黒エネルギーという、耳慣れないテーマを紹介していた。
暗黒物質(ダーク・マター)というのは、最近はよく耳にするようになったが、
暗黒エネルギーという言葉を聞いたのは初めてだった。

宇宙のはなしは小学生のころから大好きだった。
多分手塚治虫の漫画の影響が大だったのだろうと思う。
図書館でよく宇宙の図鑑などを見ていた。

あるとき偶然目にした原子とか原子核などの極微の世界の図鑑が、
宇宙の構造にとても似ているように感じ、
理由はわからなかったが、その図鑑の絵をわくわくして見つめていた。

それ以来、宇宙も好きだが、原子、原子核、ニュートリノという
極微の世界にも興味深々という少年のときのままで50年が経過したという状況が続く。
ただ数式はサッパリなので、お話の世界として興味があるだけである。

宇宙のビックバンという概念を初めて知ったときは興奮した。
現在の宇宙のすべてが、針の先端よりも小さなものから始まったという事実である。
その考えは何の疑いもなくわたしのなかにストンと落ちた。
極微の世界と、宇宙は似ていると感じた小学生の直感に結びついたのである。

時間の長さや、空間の大きさはまぎれもなく、相対的な感覚である。
次元の異なるトポス(場所)において、それぞれの宇宙があるのが感覚的にわかる。

これ以上分割しようがない最小物質、ニュートリノを研究するために、
何キロにも及ぶ陽子加速器施設をつくり天文学的なお金をかけて実験がなされようとしているが、
もし、これ以上分割しようがない最小単位が見つかったとすると、
我々の住む宇宙そのものがその一個のニュートリノにすぎないというふうに考えても不思議ではない。

だいぶん脱線したが、暗黒エネルギーの話に戻そう。

137億年前ビッグバンで膨張を始めた宇宙はその後、星や銀河の重力によって、
宇宙が膨張するスピードは少しずつ遅くなっていくと考えられていた。

しかし現代の宇宙望遠鏡による精密な観測結果は正反対で、
宇宙の膨張スピードはどんどん速くなっていることがわかってきたのである。

そこで科学者達は、重力に逆らって宇宙を膨張させるエネルギーを探し始めた。
そのエネルギーが「暗黒エネルギー」と名付けられたのである。
今では理論的にその存在なくして宇宙の過去や未来を語ることはできなくなっている。

わたしは生意気にも自分なりの宇宙観を持っていた。
ビックバンから始まった宇宙。最初は爆発により膨張するが、
そのうち互いの重力によって膨張から収縮に向い、
やがてまたビッグバンが始まるというシナリオである。

このシナリオなら、現在の宇宙が何億回目かの宇宙であっても不思議ではないし、
それこそが宗教が教えている輪廻そのものだと心の中で堅く信じていた。
しかし、このシナリオは暗黒エネルギーの存在によって撤回しなければならないだろう。



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sceneryの風景

宇宙の膨張が加速しているということは、
この宇宙は無限に広がり続ける一回限りの宇宙ということになる。

暗黒エネルギーに関して、サイエンスゼロではこんな説明をした。
宇宙の物質をすべてエネルギーに換算したとして
(物質=エネルギーというのはアイシュタインの有名な法則)

銀河・星などの物質エネルギーは、宇宙の全エネルギーのわずか4%。
わたしたちには見えない暗黒物質が23%。
そして暗黒エネルギーが73%だというのである。

重力の引力を打ち消す暗黒エネルギーは、作用としては引力の反対の力である。
漫画的に描けば、リンゴを手から離せば地上には落ちず、空に向かおうとする力である。
星や銀河の周辺では重力が強く、その力はほとんど目立たないが、
宇宙の大部分を占める真空の空間では暗黒エネルギーが支配的だという。
物質同士が反発しあう力である。

さらに、暗黒エネルギーはすべての空間に等しく存在するために、
宇宙の膨張とともにその量が日々増え続けているのだ。

やがて、膨張する宇宙では暗黒エネルギーが限りなく増え続け、
銀河も惑星もバラバラになり、原子や原子核もバラバラになる、
ビッグ・リップという現象で宇宙は終焉を迎え、
その後には構造のない空っぽの宇宙が残されるだけかもしれない。

「宇宙誕生から人類誕生までを1年とすると、ビッグ・リップは8年先」
という説明もあったが、このような乾いたドライなシナリオが、
現代の社会の雰囲気にはとてもマッチしていそうな気もするのである。



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