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            日常の風景   NO.0280
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家事と原発

定年退職を向えてから5年が経過した。
週に2回だけ家事一切を引きうけると自分で決めた家事当番も丸5年になる。
会社に勤めていたときは完全にノータッチだった家事。

よく考えて見れば、子供時代は割合家事仕事を手伝っていた。
積極的に手伝っていた訳ではないが、手伝わされていた。手伝わざるを得なかった。
祖母が褒めてくれるので、ご飯を炊くのはわたしの仕事だった。

おくどさんに乗せられた金属の大きな釜の下で、焚きつけに新聞紙を使い、
木切れをつぎつぎとくべてゆくのだが、
ある時期になると、釜に乗せた木蓋の下から御飯の白い汁が噴きこぼれてくる。
もう忘れたが、このときに蓋を取ってはいけない。
もう少し火をくべて、うまかして、終わりだったと思う。

昔はご飯を炊くというのでさえずいぶんと大変な仕事だった。
今では、ご飯を炊くのは一番負担にならない家事である。
我家では無洗米を愛用しているので、お米をかす手間もない。
ハイザーから米を出し、炊飯器に入れ、水を入れ、タイマーを合わせるだけ。
1分もあれは充分。家事とも呼べない家事である。

次に楽なのが洗濯。
洗濯物を洗濯槽に入れ、洗剤を入れ、スイッチを入れるだけ。
物干しざおに干す手間はあるが手間と呼ぶほどのことはない。

次は掃除である。
掃除機はスイッチを入れるだけでは何もしてくれないので、
これは、間違いなくひと手間のかかる立派な家事である。

掃除を要領よくこなすのには、相反するふたつの性格が要求される。
勤勉さといい加減さである。
わたしの家事当番の日にはルーチンとして、掃除機のスイッチは必ず入れる。
でも完璧にはしない。掃除する面積の9割があらかたきれいになればそれでよしとする。

この方針なら、家の中はそこそこにはきれいで、
家事の負担にもあまりならない。掃除は掃除に伴って物を動かしたり、
戻したりするのが大変。だから気が向けば動かすし、気が向かなければその回りだけにする。

一番大変なのは、買い物も含めての料理である。
これだけは自動的にというわけには行かないが、
無味乾燥ともいえる家事のなかでは唯一、主体的な創作力が発揮できるパートである。

家事の主体者に全権がゆだねられる。
わたしが家事当番の夕食はビールのつまみに合うような惣菜が多くなるが、
うまく作品ができたときは自分でもうれしいし、
家族がおいしいと食べてくれると、掃除や洗濯とは違うレベルの喜びがある。

家事のはなしを書き連ねたが、ほんとうに書きたかったのは原発のはなしである。
どれだけ苦しくても日本ではもう原発は止めた方がいい。
でもそれは、わたしたち庶民も覚悟のいる話なのである。

炊飯器、洗濯機、掃除機などはもう止められないし、止める必要もない。
だが、乾燥機やクーラなら止めてもいい。
特にクーラ、それにテレビは少なくとも家族で1台にするべきだろう。

そうすればエネルギー効率が良くなる上に、家族の絆がライフスタイルが変わる。

自動販売機も過度のネオンサインもいらない。
すべてを急激になくすことはできないから、10年20年をかけて、計画的、段階的、戦略的に
電気エネルギーの分配をじっくりと考え直すべき時期なのではないだろうか?



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sceneryの風景

福島第一原発の事故が起こるまでは、わたしは原子力発電に関しては、
消極的な黙認派だった。
原子力が未来のエネルギーの先取りであるという事実は、
こんな問題が起こる前からずっと主張してきたし書いてもきた。

わたしたちはこの100年間で、過去のエネルギーである石炭、石油を無尽蔵に燃やしつくし、
何十億年ものあいだ密封されていた二酸化炭素を空中に巻き散らかしたのである。
それでもまだ足りずに、原子力という未来のエネルギーにも手をつけているという論調で書いた。

未来のエネルギーの意味はもちろん放射性の廃棄物の処理である。
原子力発電で燃やせば燃やすほど増え続ける廃棄物は、
わたしたちの子孫が、当然自分達が使えるエネルギーを注ぎ込んで、
何千年、何万年も管理しなければならないからである。

だが仕方がない、社会的必要悪だと半ば諦めてもいた。
ロシアやアメリカで原発事故が起きたときでさえ、
安全には慎重すぎるぐらいの日本だから、日本には重大な事故は起きないと信じていた。

飲み屋での政治談議では、原発には反対でありながら、
原発を擁護する論調で話したこともある。
原発こそが地球の温暖化防止の切り札ではないのか?
水力発電のダム問題や火力発電の二酸化炭素問題。
国際競争力や雇用の問題など、取りとめのない話をつぎつぎと繰り出した。

でも、安全神話は嘘だった。まやかしだった。
不便や不利は承知の上で、子供や孫のために、もうこのあたりで、
原子力発電は止めにしたい。
止めることを前提にして、その影響の見極めとわたしたちができることを探りたい。

電気料金は当然上がるでしょう。
消費税も10パーセント以上には上げざるを得ないでしょう。
二酸化炭素問題も鳩山前総理が宣言した25%削減は夢のまた夢です。



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