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            日常の風景   NO.0272
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新春の大整理

正月明けから今日まで連日の大仕事だった。
この仕事は実は定年退職後にすぐに手をつける予定だった。
だが今までぐずぐずと先延ばしにしてきたのである。

その仕事といえば埃のように積もりに積もっていた、
自分の部屋の不用品の整理である。

だがいつでもできる仕事はわたしの場合
「そのうちに」ということで放置されたままになるのが通例である。

だが巨大な外圧がやってきた。
大きなベッドをわたしの部屋に持ち込まざるを得ない事情が勃発したのである。

わたしの部屋は2階の8畳の洋間であるが、ホームゴタツと座椅子がかなりの場所を占有。
コタツの上にはパソコン、近くにプリンターが3台とルータやハブ。
奥と手前とに2重にぎっしりと本が詰め込まれている家具の本棚があり、
それでも足りずに簡易な本棚がふたつ、エレクトーンがあり、椅子があり、
オーディオセットがあり、クリアケースの棚がありで
要約すれば、まったく余分なスペースがない乱雑な部屋だったのである。

部屋にベッドを持ち込むなんて不可能だった。
画期的なパラダイムの転換が必要だった。
正月明けから頭をひねり、うめきながらすこしずつこの作業を進めてきた。

壁際に収納家具がある。その中身を全部放り出し、
天井までのスペースが全部生きるように簡単な設計図を書き、
まず棚を作ることから始めた。

ホームセンターに行き、大きなボードを購入すれば
必要な寸法にそのボードを裁断してくれる。
後は長いネジ釘とクラッチドライバーで棚板を組み立てて行くのである。

部屋のかなりのスペースを占めていたアルバムは、すべて外に放り出した。
古い洋服箪笥をアルバム箪笥に改造して収めた。

本棚の小説や漫画はブックオフに持ち込み、
500冊〜600冊を処分した。3000円ぐらいにしかならなかった。
半分以上の本がブックオフでも無価値と判断され、頼み込むようにして置いてきた。

3.5インチのFDも300枚以上あったと思う。
念のためにネットオークションでも調べてみたが、
安くてもまったく売買が成立していない。ゴミである。
捨てるにも、普通の燃えるゴミとしては処理できない厄介な種類のゴミだった。

音楽の入ったカセットテープも200本以上。
一度は処分したのだがVHSのビデオカセットもまだかなり残っていた。

しかし整理が興に乗って来ると、時間はかかるが捨てるという作業はある種の快感になる。
棚の奥から本棚の引き出しまで、すべて過去のものを引きずり出し、
ひとつひとつ点検しては、捨てる。

毎日この作業をリズミカルに繰り返してゆくと、
過去にたまった滓のようなものが一掃され、
身も心も軽くなってゆくような爽快さを感じたのである。



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sceneryの風景

奮闘した結果、無事にベッドが運び込まれた。
ベッドを移動するようになった主な理由は、
相棒との生活のリズムのズレである。

わたしが眠る時間はほとんどが12時前。
10時過ぎには眠りたい相棒。
わたしが床に就く気配で、やや不眠症気味の相棒の目が覚め、
そのまま寝付けなくなるということも多かった。

酒を飲んだ後でのわたしの鼾も引け目に感じていた。

だからベッドをわたしの部屋に移動させる決心をしたのだ。
この決断は大変だったが、よかったと思う。

ベットを持ち込んだにも関わらず、整理を終えると
今までより空間が広くなったような気がする。

工夫したおかげで、いちいち立ち上がらなくてもプリントアウトができるし、
頻繁に使うものは、手の届くところに全部配置した。

相棒も寝室が自分の部屋になった。
結婚以来、わたしの部屋はあった。子供部屋もあった。
ただ、相棒の部屋だけがなかったのである。

新しいホームゴタツを買ったり、古い家具を持ち込んだり、外に出したり、
今回の大騒動、新鮮な変化を一番感じているのは間違いなく相棒である。



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